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恋するあの子は無表情



そしてかれこれ20分位経っている…が、まだ着かない。
なんだこれ。遠い…長い…。


「文人、疲れたか?」
「少し。…涼太は?」
「俺はへーき!」
「まだ、学園は見えないのか?」
「うぅーん、……あ、 あれじゃないか?」

やっっと着いたのか…



どんな所だろうかと顔を上げた俺はただただ呆然とした。

涼太が指を差したその先には、城があった。






ーーーーーーー




絶句。

俺の頭にはそんな2文字が浮かんだ。
これは本当に…学校なのか…否、学校と呼んでいいのか。

開いた口が塞がらない俺の隣では涼太が
「王道学園ktkr!」
と拳を握り締めて喜びを噛み締めている。


言い忘れていたが、涼太も腐男子らしい。親父のことを師匠と呼んでいたし、一緒にBL本読んでたし。何より、俺が男子校に転校する…と言ったとき、涼太は息継ぎもせず早口に、鼻息荒く興奮気味に

『そうだよ!師匠から聞いたんだぞ文人!無口無表情男前受けになるそうだな!何でそんな素敵すぎる誘いが有ったことを真っ先に俺に言ってくれないんだ!こうしちゃいられない…文人、俺も転校するからよろしくな。』

と…言っていた。


『涼太まで巻き込んでナントカ!』なんて、親父に怒鳴って涼太を心配した俺が馬鹿だったと思った瞬間だった。あと涼太も親父ともども地中海に沈めたいと思った。







ーーーーーーー




校舎を前にして俺達はまるで三流コント番組のような光景を目の当たりにした。

「…。」
「…。」
「…なぁ、文人。」
「……なに。」
「アレってもしかして、」
「…。」

もしかしてって…涼太はアレに思い当たるふしがあるのだろうか…。


今、俺達が見ているモノは、城のような校舎の前に佇んでいるそりゃもう巨大巨大な門……に、よじ登っている黒い人型のモジャモジャ…。


「…キモ。」

思わずそう呟いてしまった。

「文人、そんなこというなよ。それに、アレはきっと絶対もしかすると王道転入生かもしれないっ…!」
「……。」

いやそんなことより、早く校舎に入りたいんだが…。

「なぁなぁ、文人。」
「あ?」
「せっかくモノホンの"王道君"に遭遇したし、しばらく観察してこうぜ?」
「…は?」

何言ってんの涼太?バカ?

「そ、そんな怖い顔すんなよ……やっぱ、ダメ?」
「……。」


絶対見て行きたい!と顔どころか全身に書かれて俺を見上げる涼太に、ハァと肩を落として一つ溜息をつく。

「…どうせ、観察しないと気がすまないんだろ。お前は。少しだけだからな。」
「ッ!文人、かっこ良すぎんだろ…何それ惚れ直した。無表情デレ萌えるやべぇ…大好きありがとうあいしてるZE!!」
「あー…ハイハイソウデスカー。」

両手を広げて向かってくる涼太をやんわりと押し返しながら、友達作りがヘタクソな俺は、小学校からの付き合いとはいえこの幼馴染に甘すぎるだろ…と、むず痒い感覚に口元がほんの少しだけ緩んだ。



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あきゅろす。
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