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似ている人をつい目で追ってしまう癖も、直さなきゃね。



翌日。

「…ここは…?」
「役人達がいる…まあ、役所みたいなところです」

緊張した面持ちの三人は、一つの建物の前で顔を見合わせた。

「…ではお唐さん、私達はここに」
「はい。ありがとうございました、…」

お唐が、建物の中へ入っていく。陽七は思わず、徳勝の手を強く握っていた。

「大丈夫です。お唐さんは強い方です」
「でも、……」

小さくなる背中。陽七は、握っていた手の力を緩めると、唇を噛んで言葉を飲み込んだ。




一方。下町の一角、山北家。

「ねえ、母ちゃん!」
「ん?どうしたの、末吉」

洗濯物を干し終えた末吉が、昼飯の片付けをしている澄に話しかけた。

「これから、徳兄ぃんとこに遊びに行ってもいい?」
「徳勝さんがいいって仰ったらね」
「うん、じゃあ行ってきます!」

元気良く飛び出した末吉。その後ろ姿を見送っていた澄は、不意に耳に入った話し声に反応した。

「おい、ありゃあお役人様じゃあねぇか?」
「最近お上が厳しいっつうじゃねぇか…早く家ン中入っちまおうぜ、いちゃもんつけられちゃあ堪んねえや」
「お役人様…?」

呟いて、声のする方を見る澄。と、確かに遠方から数人の役人らしき男達がやってきていた。

「…何かあったのかしら…」

この辺りで打ちこわしでもあったのだろうか。もしくは、数年前ロシヤが来たという事件のようなことがまたあったのだろうか。
近づいてくる一行を見て、ふと目を見開いた。

「…え、」

数人の役人、その中に見覚えのある姿。

「………去助、さん…?」

澄の呼びかけには応じぬまま、去助によく似た姿はやがて道の向こうへ消えた。

「まさか…見間違い…よ、ね」





似ている人をつい目で追ってしまう癖も、直さなきゃね。





(それが、運命の悪戯だとも知らずに)

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