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たとえば七色の音を持っていなくても、きらめく風をまとえなくても、覗いた鏡に映るのが自分だったら、それだけで素敵なの。



「さて、今日は久しぶりに反物を仕入れましょうかね」

徳勝の言葉に、陽七は目を見張った。

「陽七も来ますか」
「え…た、反物、ですか?」

反物という言葉に狼狽える陽七に、徳勝は不思議そうに首を傾げた。

「そうですが、何か…?」
「…反物なんて、その…高価な、もの…」
「……ふふ、早く慣れてしまわないと大変ですね」

さも可笑しげに笑った徳勝は、懐から小袋を取り出し陽七に差し出した。

「陽七が、持っていてください」

戸惑いながらも、受け取った紐を解いて中を見る。使い古された金貨が、日光を受けて鈍く煌めいた。

「う…わ、小判…!?」
「一朱判ですよ、そこまで高価ではありません。銭貨もありますよ」

悪戯が成功した時のような、無邪気な笑顔を浮かべる。目を丸くして袋を覗き込んでいた陽七は、そんな徳勝を見て思わず感嘆の溜め息を漏らした。











吉原はずれ 其の参












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あきゅろす。
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