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愛とか恋とか言葉にするのは惜しいくらいに、君といるとしあわせなんだ。



「おはようございます…あ」

翌朝、陽七が階下へ行くと既に朝餉の準備が成されていた。

「すみません、準備終わっちゃいましたか」
「今日は早めに済ませて、店を開けなければいけませんから」

徳勝が器を運ぶのを見て、慌てて手伝いに向かった。早朝の眠い頭に染み入る、味噌汁の匂い。




「…さて」

木戸を開け放ち、太陽を仰いで大きく息を吸う。

「あなたは、お客さんにお茶を出してください。初めは、それだけで良いですから」
「はい」

薬缶が、カタカタと音を立てた。




最初の客は、店を開けて早々に来た。

「おはよう、ノリさん」
「おはようございます、館林さん。今日は何をお探しで…?」

常連なのか、館林と呼ばれた男は徳勝に軽い挨拶をして店内をぐるっと見回した。

「今日は、新しい肌着…お?」

部屋の奥に座っていた陽七を見つけ、徳勝に疑問の目を向ける。

「居候の者です。陽七、館林さんにお茶を」
「はい」

台所に引っ込んだ陽七を見て、ほう、と感嘆の声を上げる館林。

「ノリさんもついに手伝いを雇ったか」
「いえ、彼は新しい家族ですから」
「家族?…それは、また」

陽七が湯呑みを運ぶと、館林は「どうも…」と遠慮がちに口を付けた。その間に、徳勝が数枚の肌着を持ち出す。

「木綿でよろしいですか?」
「ああ。…やっぱり、ここには良い物があるね」

一枚を手に取り、肌触りを確かめ頷く館林。これを、と差し出した一枚を受け取ると、徳勝は深く頭を下げた。

「ありがとうございます。また、お越しくださいませ」




その日は、他に七八人の客が来て各々求める物を買っていった。そして、必ず陽七について訊ねた。

徳勝の答えた「新しい家族」という言葉を聞く度、陽七は照れくささを隠すのに必死だった。





愛とか恋とか言葉にするのは惜しいくらいに、君といるとしあわせなんだ。





(だって、こんなに胸が暖かい)

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あきゅろす。
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