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春風の優しい散歩道を君と並んで歩くように、僕らはゆっくり想いを重ねよう。



「美月さん、これはこっちの箪笥で良いですか?」

色鮮やかな反物を抱え、陽七は糊を作っている徳勝に尋ねた。

「ええ、合っていますよ」
「それじゃあ、干してある着物を仕舞ってきますね!」
「よろしくお願いします」




陽七はあれから、ここ美月屋に住まわせてもらうことになった。
代わりに、こうして徳勝の仕事や家事を手伝っている。

「…ふう」

着物を板から剥がす作業を繰り返し、少しばかり手を休める陽七。ふと、手にした着物の柄を眺めた。

「…綺麗な着物だな…」

若草色の生地に金糸の刺繍で蝶が描かれた、春を思わせる女物の着物。
他には群青色の生地に紅の椿、山吹色の生地に薄紫の藤蔓…どれも見事な刺繍が施され、嗜好品の良し悪しに疎い陽七にもそれは良品だと分かった。

「…こういうの、着られるようになったら良いな」

着物を日射しに透かしてみる。視界に柔らかく刺さる萌葱色は、陽七の心を温かく満たした。











吉原はずれ 其の弐












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