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「………まあいい」
先に動いたのはケーニッヒであった。
「……お前はきっと痛感する。この城で…このカルテで、自分の考えが間違いだということを……」
ゆっくりと力無く椅子に座り、絞り出すように恨み言を呟く。フィデルはその言葉に何も返さず、床に散らばった破片を片付け始めた。



「……次の夜伽は、明日か…」
自室に戻り、寝装に着替えたフィデルは重い溜め息を吐いた。
後継の儀が近づくにつれ機嫌を損ねていくケーニッヒが、その鬱憤を如何にしてぶつけてくるかは解ったものではなかった。先の諍いもあり、決して穏やかには済みそうにない。
覚えず、眉間に皺が寄った。
「……失礼、フィデル殿」
ノックの音に振り返れば、同じく寝装姿のファルベとブラウ、ローサにゲルプの四人……少なくとも、フィデルは好感を抱かない重臣たち……が、次々に部屋へ入ってきていた。
思わず警戒心に身を竦ませ、動きを止めるフィデル。
「……何の御用でしょう。こんな夜更けに」
「いや、込み入った話がありましてな…!」
ニコニコと笑いながら、ローサが歩み寄る。後に続いていたブラウは無言のまま、フィデルを睨むように眺めた。
「込み入った……とは」
「……ファルベ殿」
「我々は、普段の貴方の働きを評価しているのですよ。新参者にしては、大きく貢献してくれている」
どこか刺のある言い回しに、フィデルは微かに表情を歪めた。
「…だが、ふと心配になりましてな。不慣れだという、夜伽の仕事は如何なものか」
「……ご高配、ありがとうございます。概ね、良好かと」
「…なるほど…では、一応は心配なしと…」
慎重に言葉を選ぶフィデルに、ファルベが眉を顰める。
「しかし我々には、ケーニッヒ様をより満足させる義務がある……そこでだ」
「…ん、ッ!」
ファルベの合図で、ブラウとローサが二人がかりでフィデルを押さえつけた。
「王に相応しい躯か、我々が確かめてやろう」





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