24 「………まあいい」 先に動いたのはケーニッヒであった。 「……お前はきっと痛感する。この城で…このカルテで、自分の考えが間違いだということを……」 ゆっくりと力無く椅子に座り、絞り出すように恨み言を呟く。フィデルはその言葉に何も返さず、床に散らばった破片を片付け始めた。 「……次の夜伽は、明日か…」 自室に戻り、寝装に着替えたフィデルは重い溜め息を吐いた。 後継の儀が近づくにつれ機嫌を損ねていくケーニッヒが、その鬱憤を如何にしてぶつけてくるかは解ったものではなかった。先の諍いもあり、決して穏やかには済みそうにない。 覚えず、眉間に皺が寄った。 「……失礼、フィデル殿」 ノックの音に振り返れば、同じく寝装姿のファルベとブラウ、ローサにゲルプの四人……少なくとも、フィデルは好感を抱かない重臣たち……が、次々に部屋へ入ってきていた。 思わず警戒心に身を竦ませ、動きを止めるフィデル。 「……何の御用でしょう。こんな夜更けに」 「いや、込み入った話がありましてな…!」 ニコニコと笑いながら、ローサが歩み寄る。後に続いていたブラウは無言のまま、フィデルを睨むように眺めた。 「込み入った……とは」 「……ファルベ殿」 「我々は、普段の貴方の働きを評価しているのですよ。新参者にしては、大きく貢献してくれている」 どこか刺のある言い回しに、フィデルは微かに表情を歪めた。 「…だが、ふと心配になりましてな。不慣れだという、夜伽の仕事は如何なものか」 「……ご高配、ありがとうございます。概ね、良好かと」 「…なるほど…では、一応は心配なしと…」 慎重に言葉を選ぶフィデルに、ファルベが眉を顰める。 「しかし我々には、ケーニッヒ様をより満足させる義務がある……そこでだ」 「…ん、ッ!」 ファルベの合図で、ブラウとローサが二人がかりでフィデルを押さえつけた。 「王に相応しい躯か、我々が確かめてやろう」 [*前へ][次へ#] [戻る] |