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「………タンナ、さん…!」
それは、見慣れた背中であった。湖を眺めているのか、微動だにせず遠い目をしているタンナに、ヒールは思わず目を丸くした。
その後ろから、コッブが同じように覗き込む。
「…蝉?」
「はい…タンナさんっていう、私の…お、お友達、ですっ」
僅かに赤面するヒール。カサカサと草を掻き分け、タンナの元へゆっくりと近寄った。
「…タンナさん?」
ヒールの声で漸く気づいたらしいタンナは、ゆっくりと振り返った。
その目からは、光が失われているようにも見えた。
「………ヒー、ル…っ!!」
虚ろな目に刹那、恐怖の色が浮かぶ。その視線は、ヒールの後ろを捉えていた。
「ヒール、危ない!!」
「え…っ!?」
強く体を引き寄せられる。ヒールを庇う形で、タンナは恐怖に震えながらも目の前の蜘蛛…コッブに対峙した。
「ヒー、ル…」
「タンナさんっ!待って、違うの!」
すかさずヒールがタンナを制止する。悲しそうに表情を歪めたコッブに近づき、蒼褪めるタンナにへらりと笑いかけた。
「コッブさんは…私の、お友達なんです」
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