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「コッブさん、こっちこっち」

とっぷりと陽は落ち、静まり返った森に小さな声がする。
ヒールは約束通り、森の虫達が寝静まった頃合を見計らって、コッブを森へと連れてきていた。

「暗くてよく見えないね…」
「そうでしょう、足元には気をつけて」

ひそひそ声の二人が向かうは、森を行った先の湖。カサカサと草の揺れる音と冷たい空気に、コッブは暫し胸を踊らせていた。

「…着いた」

ヒールの声で前方に目を凝らす。広い水面と水草の伸びる空間に、うわあ、と感嘆が漏れた。

「すごい…!」
「素敵なところでしょう?昼は賑やかですけど、夜も綺麗なんです」

月光を受けて仄かに光る水上。コッブは思わず、近くの草に飛び乗って湖を眺めた。

「綺麗だなあ…!」
「気に入ってもらえて良かった」
「ありがとう、ヒール!」

くすりと笑ったヒールが、不意に何かを見つけて動きを止めた。草から降りてきたコッブが、不思議そうにヒールを見る。

「どうしたんだい、ヒール」
「しっ…誰かが、向こうにいます」

え、と零したコッブを片手で制止すると、ヒールはそろりそろりと草陰に近づいた。




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