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Pretty lover(7777hit)



「…なぁ、おい」

「…………」

「…聞いてんのか、コラ」

「…………」

「…いつまで黙ってんだ」

「…………」

「………………サンジ」

「………っ……」



サニー号のキッチンでは、こんなやりとりが続いて数十分。


一向に自分と口を聞いてくれないサンジに、ゾロは頭を悩ませていた。


(何だってこんな不機嫌なんだ…?)


昼間は機嫌が良かったサンジ。

何故こんなに不機嫌なのか、ゾロは今日一日の事を振り返ってみる。


今日の午前中は、予定通り新たな島に辿り着いた。

サンジと二人で買い出しに出掛け、いつも通り荷物持ちとして店の外で大人しく待っていた。

勝手に動いたりはしていないし、荷物も文句一つ言わずに船まで運んだ。


だけどサンジの機嫌が悪くなりだしたのは、確かここら辺から。



何度思い返しても、ゾロの頭の中ではサンジを怒らせた原因が見当たらない。


不思議なのは、今のサンジ。

本当に怒っているときはゾロが指一本でも触れようものなら殺人的な蹴りが飛んでくるのに、サンジの腕は今ゾロの首にしっかり回されている。

ゾロもまた、サンジの細い腰を抱きしめたまま。


なのに口は開かないし顔も見せてくれない。
甘えている訳でもなさそうだ。

ゾロは困り果て、頭をガシガシと掻くと深い溜め息を吐いた。




「……おい」

「……………」

「……俺は鈍いから…お前がちゃんと言ってくれねぇと分かんねぇ」

「…………」

「…とりあえず…顔、見せてくれねーか…?」


ゾロはそう言って、サンジの体を剥がそうとする。
しかしサンジも負けじとゾロに張り付いて離れない。


「サンジ」

「………………ゃだ」

「………顔見せねぇなら…ちゃんと話せ」


やっと聞こえたサンジの声は、消え入りそうなくらい小さくか細かった。

それは怒っているような声ではなく、少し寂しげで苦しそうな声。

ゾロはサンジの頭を優しく撫でて、あやすように背中をポンポンと叩いた。


「……………ぞろ……」

「……ん…?」

「………ゾロ…………すき…好きだ…」

「………あぁ…」


何を言われるかと思えば、サンジは好きだと必死に伝えてきた。

ゾロもそれに答えるように、サラサラの金髪に唇を落とす。

続きの言葉を大人しく待っていると、サンジはゾロを抱きしめる腕にギュッと力を込めてきた。




「……今日……島で……」

「……ん…?」



ようやく話し出したサンジに、ゾロはゆっくりと目を閉じて耳を傾けた。



――――――……‥‥






それはサンジが買い出し中の時のこと。


ゾロを店の外で待たせて品物を物色していると、どこからか黄色い声が聞こえてきた。



『ねぇねぇ、あの人ロロノア・ゾロじゃない!?』

『えっ、嘘?本物〜!?』

『本物よ!刀三本だし緑髪だし!海賊は怖いけどロロノア・ゾロなら格好イイから許せる〜!』

『分かる〜っ!ねぇねぇ、話しかけちゃおっか?』


サンジはその声にピタリと動きを止めた。


店の外のゾロは呑気に欠伸をしながら、壁にもたれ掛かっている。


ゾロは女に話しかけられたからといってアッサリついて行く男ではない。

そう分かっているのに、サンジは自分の気持ちがどんどんモヤモヤしていく事に気付いた。


レディが大好きなサンジだが、ゾロの事はもっともっと大好きで。

まさか自分がレディに嫉妬する日が来るなんて思ってもみなかった。

サンジは急いで買い物を済ませ、ゾロの元に駆け寄った。


その場を後にして買い物を続けていくが、耳を澄ませばあちらこちらでゾロの名前が聞こえてくる。

高額の賞金首なので有名なのは分かるが、ゾロの名前を口にするのは女ばかりだ。


当の本人は全く聞こえていないのか全く気にしていないのか分からないが、相変わらず無愛想な顔で前だけを見据えている。

船へ戻る最中も、すれ違う数々の女はゾロに見とれ振り返っていた。


サンジはそれを見たくなくて、ずっと下を向いて船まで歩いた。



――――――……‥



「……俺……凄く嫌だったんだ…ゾロは…俺の恋人なのにって……」

「……………」



ゾロはサンジの金髪を撫でながら、優しい笑顔を浮かべた。


「…もしかしてお前……妬いてたのか?」

「!!…妬いてねぇ…」

「…へぇ?こんなに頬膨らませて?」


ゾロがサンジの横顔を覗き見れば、プクリとした赤い頬が窺える。


「…うるせぇ…あほまりも」

「ククッ…そういう事か」


意地悪そうに笑いながらも、ゾロの顔はとても嬉しそうで。


「可愛いな、テメェは」

「っ…可愛くなんか…ねぇ」

「…それで…一人で不安になってたのか?」

「……っ…」


サンジはゾロのシャツをギュッと握りしめると、その筋肉質な肩に顔を埋めた。


「…だってよ…世の中には…あんなにたくさん素敵なレディがいて……なのに、ゾロは俺を選んでくれて…」

「…………」

「いつか、やっぱりレディの方がいいって…そう言われたら……っ、俺は…レディに勝てるもんなんて何一つねぇから…」

「…………」


ゾロはその言葉を黙って聞き終えると、サンジの顔を強引に自分の方へ向けた。


「……っ、?」

「………アホ。いいか?俺は女に何を言われようが、テメェがどう思おうが……生涯愛せるのは…テメェだけだ」

「……っ…!!」

「…今までもこれからも…お前しか見えねぇよ」


真剣な顔でそう言われ、サンジの瞳にはジワジワと涙が浮かんでくる。


「…勝手に不安になってんじゃねぇ」

「…ぅ……ぅ〜…っ」


サンジは顔をクシャリと歪ませながら、ポロポロと涙を零した。


「泣くな、アホコック」

「…っ、泣いて…ねぇ…っ」


目の前でどんどん流れてくる涙を親指で拭いながら、ゾロは柔らかく微笑んだ。


「………愛してる、サンジ」






小さな声でそう囁くと、ゾロは少し尖ったサンジの唇に優しく口付けた。


end.






あとがき。

キリ番7777あやかさんからのリクエストで、
『格好良すぎてモテモテなゾロに妬いちゃう可愛いサンジ』
でした

あやかさん
遅くなってすみませんでした
素敵なリクエストをありがとうございました
また遊びに来て下さいね

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