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Wish(2222hit)


「なぁゾロ、好きだ」

「…おう」



「…大好き」

「……おう」



「……愛してる」

「………おう」



「……………」







まただ。

ゾロは、俺がどんなに気持ちを伝えても
『好き』という言葉をくれない。


俺たち、付き合ってるんだよな…?

ゾロは本当に俺のこと好きなの…?









―――……



「コックさん?」

「…は、はいっ?!」

「どうかしたの?元気ないわね」

「…そそそんな事ないですよ〜!」

「…そうかしら」



日も暮れ始めた午後五時過ぎ。

夕食の準備をしていた俺は、ロビンちゃんがキッチンに入ってきたことすら気付かないくらいボケッとしてたみたいだ。

話しかけられて、初めてロビンちゃんの存在に気付く。


…俺としたことが…
レディに失礼な事をしちまった…



「…コーヒーでも出しましょうか、マドモアゼル」

「そうね、お願いするわ」



手早くコーヒーを差し出すと、ロビンちゃんは俺の目をジッと見つめてきた。


「……?」


俺の顔に何かついてんのかな…?

不思議に思っていたら。




「恋でもしてるの?」






ロビンちゃんはニコリと笑って、そんな事を聞いてきた。

さっきまでゾロの事で頭がいっぱいだった俺は、かなりの勢いでテンパった。


「なっ…な、何言ってんですか!恋っ!?恋なんてしてませんよ〜!」

「アラ、おかしいわね。いつもの決まり文句はどうしたのかしら?」

「…はっ」



そうだ…
いつもの俺なら
『僕はいつでもロビンちゃんに恋してます』
なんて言葉はスラスラ出てくるのに。


やられた…
ロビンちゃんには適いません。



「フフッ分かりやすいのね」

「うぅ…」

「…相手が誰かは聞かないけど…コックさん、最近いつも切ない目をしてるわ」

「……そう…ですか…?」

「えぇ、とっても」




俺、そんな目してた…?

ロビンちゃんに言われて初めて自覚した。



「………」

「…あまり思い詰めないで。お話なら、いつでも聞くわ」

「…ありがとう、ロビンちゃん」



そういってロビンちゃんはキッチンを出て行った。
優しい言葉に、少し気持ちが楽になった。

だけどこんな女々しい悩みはさすがに相談できない。

同時に、ゾロと付き合ってるのがバレる事になる。


元々、この狭い船内で毎日一緒に過ごしてたら、隠し通すのにも無理があるとは思う。

むしろバラしてしまった方がコソコソする事もなく、気は楽になるかもしれない。


だけどまだ心の準備が…



そもそも、本当に両想いなのか…?



今思えば、ゾロに告白したのは俺の方から。


その時、ゾロは…

俺に『好き』って言ってくれたっけ…?






―――――……






夕食が完成して、クルー達をキッチンに呼ぶ。


年少三人組が勢いよく入ってきて、続いてロビンちゃんが静かに席に着いた。


「うほーーっ!うまそーー!!」

「こらルフィ!まだ全員揃ってねぇだろ!もうちょっと待ってろ」



今にも食事に手を出しそうなルフィに制止をかけると、ゾロとナミさんがまだ来ていないことに気付く。


少し待ってみたものの、一向に現れない二人にどんどん不安になってくる。



「コックさん。船長さんのつまみ食いは見張っておくから、二人のこと呼んできたら?」

「…は、はい…」



そう言って、ロビンちゃんがさり気なくウインクをした。



…や、やっぱり気付いてんのかな…



冷や汗をかきながら、俺は言われたとおり二人を呼びに行くことにした。



キッチンを出て辺りを見回すが、人の気配はない。


…二人してどこにいるんだ…



いや…
別に二人がいないからといって、二人が一緒にいるって訳じゃねぇんだ。


まずはナミさんを呼びにいこう。

俺は女部屋へと向かった。






女部屋に近づくと、微かに話し声が聞こえてきた。




(ナミさんと…………ゾロ……?しか…いねぇよな…)





な、何で…


何で女部屋にゾロがいるんだ。


女部屋は、男子禁制なはず…

って
今はそんな事どうでもいい。


何でナミさんとゾロが…

部屋に二人きりで何話してんだ…?



近づくにつれて、どんどん心臓がうるさくなってくる。



ドアはすぐ目の前なのに、声を出すことが出来ない。








そして、聞こえてきた会話に、俺の頭は真っ白になった。













『…好きだ。どうしようもねぇくらい』


『…ふふっ、やっと言ってくれた!始めから素直になればいいのに』


『うっせぇな。…言っとくが……俺は本気だ』


『……ゾロ』














……え…?




う…嘘だろ…?


何だよ、今の会話…








ゾロは…


ナミさんの事が…








は、はは…っ

…何だ、そういう事か。




俺に好きって言ってくんねぇ訳が…

今分かった。






…だけど。


じゃあ、


何で俺と付き合ったの…?

何で…俺を抱いたの…?











その後は、二人が何を話していたか覚えていない。

俺は震える足で何とかキッチンに戻り、平静を装った。



「…みんな、先食ってていいぞ。……ロビンちゃん、悪いんだけど…二人の分、取っといてもらっていいかな」

「わーい!いただきまーーす!!」


それだけ言うと、俺はキッチンのドアに手をかけた。


「…コックさん?」


一瞬、ロビンちゃんの心配そうな顔が視界に入ったけど、今は微笑むのが精一杯。

ちゃんと笑えてるかは分からない。



今は…

今だけは、一人にして欲しい。








そうだ。

今日の不寝番は俺だ。

ちょうどいい。


もう見張り台に登っちまおう。


そうすれば、誰とも顔を合わさないで済む。






見張り台に登った俺は、夜空を見上げた。


視界いっぱいに星が広がっている。




俺がゾロに告白したのは此処だった。

その日も、星が綺麗だった。




「………ゾロ…」



小さく名前を呼んでみる。



…俺、フられんのかな…




相手がナミさんじゃ、とても適わない。



だけど、相手がナミさんだからこそ
この気持ちに諦めもつくかもしれない。





でも…


でも。









「………やだぁ…っ」








いつの間にか、涙がポロポロと流れていた。





離れたくない。



行かないで…
行かないで。





「…ぅ、…ひっく……ふぇぇ…っ…!」




涙はどんどん溢れてきて、止まってくれない。




「…っ、ぞろ……ふぇ……ぞろぉ……!」



涙を拭うことも忘れて、ゾロの名前を呼んでひたすら泣いた。









すると、ギシギシと誰かが見張り台へ登ってくる音がした。



「っ…」




やばい。

こんな所、誰かに見られたら…


急いで涙を拭うと、音のする方から背を向けた。





―――ギシッ!










「サンジ!」


「…っ……!!」







ゾ、ロ…?



何で…このタイミングでゾロなんだよ…っ


今、一番会いたくて…会いたくない人。




「……話がある」

「……!」



…いよいよフられんのか…?


まだ…心の準備ができてない。



言わないで…




「サンジ、こっち向け」


「…っ、嫌…だ」





今ゾロの顔見たら…

絶対みっともなく泣いちまう…



「…じゃあ…そのままでいいから……聞いてくれ」




そう言われて、次の瞬間
ゾロは俺を後ろから抱きしめてきた。



「…っ…!?」


「…………サンジ」



今までにないくらい力強く抱きしめられて、目頭がツンと熱くなってくる。



何だよ…

今から別れ話すんのに
そんな事すんなよ…っ




「…ゾロ……っ、離せ」

「…離さねぇ」




何で…何で…


ゾロは俺の事…っ









「………愛してる」


「……っ…!?」






今…


なんて……?





「…照れくさくて…ずっと言えなかった…」







違う…

ゾロは…さっきナミさんに…





「…不安にさせて悪かった…俺は」


「…っ、ゾロ…!俺…っ、…お前と…ナミさんの会話…聞いちまったんだ…っ、だから…っ…、もぉ…いぃ…、ひっく」


「勘違いすんな…それな」


「…ふぇぇ…っ」


「……お前の事だ、アホ」


「………ふぇっ…?」






一瞬ゾロが何を言ったのか分かんなかった。


…俺の事…?




「…ったく。勝手に思い込んでんじゃねぇよ…あの時、俺が『ナミ』を好きだと言ってたか?」



そう言われて、さっきの事を思い返してみる。




「……………」

「……………」


「…………言って…ない」


「あぁ。あの時…ナミに無理やり部屋に引っ張り込まれて、お前との事散々聞かれたんだよ」



…え。



「お前…毎日寂しそうな顔して俺の事見てたんだよな…?悲しませるなって怒られちまった」

「あ……」

「さっきナミとロビンから聞いたんだ…ツラい思いさせちまって…本当にごめんな」




なん…だ…


俺一人で…勘違いしてたなんて…




安心感から、また涙が溢れてくる。

それと同時に、ゾロの事を信じてあげられなかった自分に胸が痛んだ。


俺はゾロの方を向いて、逞しい体にギュッとしがみついた。



「…ぅう〜…っ…ぅぇえ……ゾロぉ〜…」


「あぁ、泣くな……これからは…お前が欲しい言葉、ちゃんと言うから」


「ひっく…ゾロ…好き……大好き…っ」


「……俺も…大好きだ…愛してる」





そしてゾロは俺の涙を拭いながら、優しいキスをくれた。


今度は、心からゾロとちゃんと結ばれた気がした。








それから、俺とゾロは恥ずかしながら…クルー公認のカップルになった。


ナミさんやロビンちゃんにも感謝しなくちゃ。




「…実はね、サンジ君。あれ…ロビンとの作戦だったのよ」

「え?」

「本当はね、あの時サンジ君にゾロの気持ちを聞かせてあげるつもりだったの…変に勘違いさせちゃってごめんね」

「フフッ。でも、コックさんが勘違いしちゃった事を伝えたら…剣士さん必死になってアナタを探しにいったわよ」

「あの時のゾロの焦りようったら凄まじかったわよね〜。愛されてるのね、サンジ君!」

「…………は、ぃ…」



顔の温度がどんどん上昇していくのが分かる。

俺…今、絶対真っ赤な顔してる…



っていうか、結局二人には最初からバレてたって事かぁ…



「ま、でもそのお陰でさらに愛が深まったみたいじゃない?結果オーライねっ」

「そうね。コックさん、もうあんな寂しそうな顔しちゃダメよ」

「……はぁ〜いっ!やっぱりお二人は素敵だぁぁぁ!」

「いつものサンジ君に戻ったわね」








―――……


言葉で伝えるだけが全てじゃないけれど。

やっぱり、好きな人からの愛ある言葉は大きな力を持ってると思うんだ。


ゾロは照れながらだけど、少しずつ愛の言葉をくれるようになった。


その一言一言を…

俺は、一生忘れない。





end.




あとがき。

2222hit
コトブキさんからのリクで、

『ゾロが浮気したと思い込んで泣いちゃうけど最後は甘いゾロサン』

でした


まず…
こんなのですいません
でも個人的には書いてて楽しかったです
サンジを泣かせちゃうのが好きなんです

コトブキさん、素敵なリクありがとうございました

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あきゅろす。
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