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Maquette-Mannequin  〜マケット・マヌカン〜
Page7,5 幕間 妬むも恨みはしない




コハク「はぁああああ」


深くため息をつく。

これで何度目だろうか?


つい別れ際に彼に向って本音をぶつけてしまったが、本当によかったのだろうか?


コハク「って言っても…ね」


今まではそうすることも出来なかった。
あの時はそうするしかなかった。


いいえ、いつだってそうだった。
初めて彼と出会った時も、別れたときも。


いつも私はどこかしらで

『しかたのないこと』

そう割り切っていたのかも知れない



コハク「っは」


キレイゴトを。
割り切っていたですって?
冗談じゃない

未練タラタラの諦めの心情じゃない


いつまで自分を誤魔化し続けるの?



コハク「わかってるっての…」


私は悪態を吐く自分を手で払いのけると、体を起こす。
今の今まで草原に大の字になって空を見ていた

なんとなぁく、答えが出てきそうだったから。


無駄だったけどね…。



コハク「にしても…」

傍らに目をやると茶の席とは違う椅子がある
しかも二つ。


ひとつには青い髪の少女の影が鎮座し
もうひとつは空席。


しかし、その席もすぐに別の影が座ることになるだろう


コハク「ヤーンの契りの重ね掛けだなんて…まるであの時みたいじゃない」


昔を省みる
輝かしい思い出と共に湧き上がる邪な感情。

成人して、再会した愛し人とのすれ違い
それはとても長い時間の経過を感じさせる、とても辛いものだった

お互い、大人になるっていうのかな
辛気臭いったらありゃしない。


コハク「いやだね、認めたくない」

なにが?
全部さ。

過去のすれ違いも
現在の剥奪も
己の老いも


なにもかもがイヤ。



そうやって子供のようにジタバタと暴れているとため息を吐く少女が現れる


プラム「こんなのが、夢間の蟲…?」


彼女はとても複雑な表情で私を見下ろしていた。

あああ、苛立つ。
なぜかって?

そんなの決まってるじゃない
何を隠そう、この少女こそ残る空席に鎮座した存在なのだ


コハク「しかも…よりにもよって隠していた『彼自身』の席に…」


私が機会を見計らって座ろうと思っていたというのに…


プラム「……」

コハク「なによ、そんな目で見ても許してあげないんだからね」

彼を奪った罪はとても重い。
それはあの青い髪の少女も例外ではない。

一度ならず二度までも…忌々しい。
可能であればこの姿で喉元掻っ捌いてやるのに…ああっ!!


プラム「あなたに、ひとつ、お願いがあるの」

コハク「はぁ?」


お願いぃ?
小娘が、私にかっ…



………



コハク「なんだって?」

プラム「この約束を守れるかは、あなたと彼しだい」


踏み絵かしら?
そんな条件を出されたところで私は従う道理はない。
それどころか、好待遇にあやかってその席を横取りするかも知れない


だというのに、この少女は…


コハク「本気?」

プラム「もちろん」


はははっ

おもしろい


この少女が持ちかけて来た取引に応じようじゃあないかっ!


コハク「わかったよ、だったら私は――――」



夢間の蟲、蠱惑の夢として

彼を待ち続けてみるとしよう



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