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Maquette-Mannequin  〜マケット・マヌカン〜
Page 7「二つ目の契約」

アレース「……」





ゲートを潜り、仲人界へと転移している最中アレースは昔の事を思い出していた



あれは、いつの話だったか…

我ら兄弟が今の主に預けられる前…そう、創造主の元に居た頃だったか

弟が作られて間もなく、カイライ軍の他世界への攻撃活動と性能実験中の出来事だった



―――――――――


―――――


――



『ひぃぃぃいぃ!!!』


『お助けを!!』


絶叫

断末魔

それに合わせ鳴り響くように金属は研ぎ澄まされ、

腕を振るう度に血液が飛び散り辺り一帯を赤く染める




ネメシス『だぁーめだ!!!殺してやる!!!』


無情

その一言だ

幾ら敵がマヌカンの軍人とはいえ、武器もなく魔力も尽き

戦闘意識を無くした物への目に余る惨殺行為




獲物を仕留め終えると暫くの間余韻に浸り


新たな血を求め鼻を効かせる


ネメシス『ひ…ヒヒ…あっちに村があるな…』



アレース『止せネメシス、我らの目的は敵軍への攻撃のみ…一般人を巻き込むな』



私の制止の言葉を聞くや否や、今にも駆け出そうと身構えていた姿勢を崩す

どうやら聞き入れてくれたようだ…私は、肩の力を抜いて撤退の準備に入ろうとした時だ



ネメシス『なーんちゃって!!!』


私は自身の甘さを呪った

奴は私が気を抜いたのを視覚で確認することなく魔力だけで判断し、
全速力で村へと駆け出す

なんという恐ろしい速度…

私はすぐに気を持ち直し、追いつくべく地面を蹴った



流石に同じ形式なだけはある…私と同等に近い脚力…

だが、幸いにも奴は走り方を知らない

追いつくことは容易だった



ネメシス『カワイイ子供がいっぱい…殺して殺して殺して殺して…食ってやる!!!』


奴は、村の外れの公園に居る子供たちを目標にしている…


もはや一刻の猶予もない…地面を大きく蹴り、体を宙へと舞わせる


ネメシス『いただきぃ――――ギっ!!!ギギ!!』


助走を付けた全力の蹴りを容赦なく奴の横顔にぶち込む

我ながら気持ちのいい飛びっぷりだ


ネメシス『ギ…ギギギ…この…』


吹き飛ばされてもすぐに受け身を取る能力は素晴らしいとだけ言っておこう


アレース『何で邪魔をした、とでも言いたそうな顔だな』


見事なまでに奴の顔は歪み、陥没している


狩りの邪魔をされて心底頭に来ているのだろう
ネメシスは獲物の針を尖らせ私に向ける





アレース『―――』



だが、予備動作を相手に見せているような奴に私は倒されない

瞬く間にネメシスの懐に入り込み、自慢の針をへし折り、今度は胸部に拳を打ち込む



ネメシス『ギぃ!!!が―――――』


仕留めた


床に突っ伏し、最早戦闘など行える状態ではない





アレース『良いかネメシス、戦いとはお互いに己の力を出し切って殺し合うものであり、単純な殺戮ではない』





ネメシス『………』



ピクリとも動かない

意識はとうに手放しているのかも知れないが私の知ったことではない

そのまま奴に語り掛け続ける


アレース『お前は一方的に弱いものを虐殺するのが楽しいか?


私はお前を沈めて見せたが、楽しいなんて気持ちはちっともしない


何故かわかるか?


お前は力を出し切っていない

脆弱で非力なお前を殺しても面白くないからだ


私を黙らせたいか?


ならば戦おう、お互いに全力をもって…』


ネメシスはゆっくりと起き上がり、私を睨み付ける


来る


ネメシス『――――!』

折れた針状の刃を高速に打ち込んでくる

私はその一撃一撃を確実に見切り
避け
拳で打ち返す

アレース『―――っは――――!』



今度こそ、こいつの能力がわかる…こいつの本気がわかる


交わる拳と刃



とても楽しい…これこそが戦い―――!



この気持ちが…ネメシスにも伝わるだろうか…


――


―――――


―――――――――






はて…あの後奴は私になんと言ったか…忘れてしまったな






…そろそろ仲人界だ…気を張るとしよう…




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



仲人界

僕とプラムは不思議な世界へと迷い込んでしまっていた



暁色に染まる浜辺


そこには見覚えのある存在が立っていた







―――――アレース―――――






ネメシス「よぉ、奴隷野郎」



サーヴァント「……」


その気迫、辺りを漂う魔力の流れを見てアレースと思い込んでいたのだ者が別人だと理解する

目の前の存在は確かに奴に似てはいるが、細かな部分に違いがあるが

いや、そんな物は二の次だ


…圧倒的な「狂気」、アレースにはないものが目の前の奴にはある


ネメシス「……――」

眩い日の光に照らされ、奴の姿が包まれると眼前から消える


サーヴァント「!!!」


胸に唐突に感じる激痛。

痛みの原因を探るべく、胸部に視線を落とせば針のようなものが僕の体を貫いていた


ネメシス「…へぇー…すげぇや…アレースの話も嘘ではないようだな」

これほど鋭い針に体を串刺しにされなかった自分に驚きつつも、目の前の存在は



自身がアレースではない事明かす


サーヴァント「…やはり、お前はアレースではないのか…っ…」


ネメシス「あ?…てめーには同じに見えんのか?」


サーヴァント「最初はわからなかったが…確かに違うようだな…お前は狂っている様に見える」

僕の言葉に奴は目を丸くしていると面白可笑しげに笑っている


ネメシス「はは!狂ってるってか…」

だが、奴の目は笑ってなどいない…獲物を殺す獣の目…


笑いを止めて息を整え始める、その静けさが不気味さを強調していた



ネメシス「――――上等だコラァ!!!」

静けさの後に突然とした怒号と共に地面を蹴ってこちらに近づく―――

直感でアレースと同等かそれ以上だと理解できた


サーヴァント「――――!」

だが、以前の僕とは違う――

思考に体が追いつく


敵はかなりの高速で突っ込んでくるが、間一髪で避けて見せる

今になって日景との訓練の成果を実感した

これよりも凄まじい剣劇を浴びてきたのだ…これしきの事でやられてなるものか



ネメシス「―――――ギ!」



砂浜で高速に機動した敵は目標である僕を見失い、制動すると砂浜に足を取られ

動きが鈍くなる


サーヴァント「…―――せい!」

僕はすぐさま敵の背後に回り込み、右手に渾身の魔力を溜め込み拳として打ち込む――






サーヴァント「――――っく!!!」


だが、その拳は奴の体に届くことはなく、代わりに僕の右手から血液が飛び散った






サーヴァント「がぁぁぁ――――!!!」

何が起きたのかわからなかった



痛み









今まで感じたことのない苦痛に意識を手放しそうになる



ネメシス「んー…――――イィ悲鳴だぁ……もっともっともっと――――!」


再び奴は地面を蹴る―――

俊足

すぐに判断しなければ死ぬ


恐らく同じ作戦は二度と通用しないだろう



サーヴァント「―――ぎ――――!」


ならばと左手を前にかざす

同じ手が通用しないなら

正面から本気の一撃を食らわせて一気に決着をつけるまで


手のひらに魔力を一瞬で高められる限界まで収束し、


ネメシス「――――聞かせろやァ―――!!スレイブぅぅ!!!!」


敵をギリギリまで引きつけて


――――解き放つ


ネメシス「――――!」

サーヴァント「――――――――――」


魔力を放った後、僕の視界は真っ白に染まり


体が宙を舞う


そのまま砂浜に叩きつけられ、体は言う事を聞かなかったが頭はクリアに思考できた


確かにありったけの魔力をぶつけたが手ごたえがなかった


理由はわからない…ただ、押し負けたのだけはわかる


迫りくる足音

魔力の爆発によって巻き上げられた砂煙の中、魔力の流れを見てこちらの位置を性格に把握し向かってくる


ネメシス「……」


サーヴァント「………」

アレースを負かしたあの力を引き出そうとしても、体は言うことを聞かない


…参った、完全に負けだ


ネメシス「つまらねぇ…こんなゴミにアレースは負けたのか……もういい・・死ね」

敵は右手を鋭い針状の刃に変化させ、僕の顔に向かって振り下ろす――


サーヴァント「―――――!」

ネメシス「な――――!」


僕は刃に貫かれることなく、風に乗り空を舞った


プラム「……………」

サーヴァント「プ…ラ……ム」


僕を確かに抱えているのはプラムだ

幾ら肉体年齢が近いからと言って男の体を軽々と抱えているのは驚いた


原理はわからないが、恐らく僕の体を軽くしてるのだろう…


これがプラムの魔法…







『パキパキ――パキっ―!!』







再び、僕の目の前は真っ白に染まる

プラムを守らなければならないというのに、この体は休息を求め
意識を無理やりにでも手放そうとしている


そうはいくか…


何が何でも守らなければいけない存在が…目の前に居るんだ…!



心で強く願い、肉体に魔力を収束する


体を無理やりにでも覚醒させ戦闘体制へと切り替え、目を開くと―――――







―――――――――




―――――





――



―――――見たこともない世界だった







―――――――どこだ、ここは



おかしい、戦っていたのは浜辺…


なんだ…神殿…?


古びてはいるが、マケットやマヌカンにも存在しない程に巨大で神聖な輝きに包まれている


これもネメシスの罠なのだろうか…?


『違うよ』


―――!

声…どこからだ…頭に直接響いてくる


『こっち、後ろを見て』


子供の声…

声に従い、ゆっくりと振り返る



プラム『おはよう、お兄ちゃん…』


プラム…!

目の前にいたのはいつも傍にいるプラムなのだが、雰囲気が違う気がする…


プラム『ここは、貴方の思想の中…簡単に言えば意識を整理するために眠って夢を見てるの』


サーヴァント『思想の中…?

だが、僕はこんな世界は知らないぞ


それにプラム…普段より話し方が大らかじゃないか?』


プラム『今の私は貴方の夢の中の存在、夢でなら知りえない空想も創造できる…』


サーヴァント『そうか…僕はプラムを守りたいと強く願った…だからプラムが夢の中に出ている』


プラム『そう、でも夢ではない部分もあるの』


夢ではない部分…―――!


プラム『このままでは確実にネメシスに殺される…もちろん貴方も、私も』


サーヴァント『そんな事させてたまるか―――!

「俺」はもう―――誰かを泣かせたり、苦しめるために存在するのは嫌なんだ―――!!』


プラム『…!………そっか…じゃあ、私が手伝ってあげる…』


プラムは呟くと背伸びをして俺の頬に手を添える

サーヴァント『プ…プラム…?』

頬に触れてくる冷たい手の平と指先

しっとりとした白い肌に僅かに紅潮した頬

艶やかに整えられている桃色の髪

潤んだ瞳

穢れを知らない張りのある唇


…とても魅力的で、心が躍り高鳴る



この子を傷つけたくない



守りたい

そんな気持ちが引水のようになり

体の、心の奥底から魔力を引き出す



プラム『鎮め―――我はヒトの意図を手繰りし者、

汝は器、注がれし水の静寂を保ち溢れる事を忘れさせる物……』



詠唱が行われ、彼女の言葉が紡がれるたびに心は落ち着き、

先ほどまでの昂ぶりは消えていく

けれども、引き出された魔力は消えることなく、自分の体に染み込む












プラム『繋ぎ無き青に張り巡らすは白き糸…

汝と我に心鎮を司る者の手解きを…繋げ!』













ヤーン
プラム『心鎮の糸手繰り、その契りを!!』














こんな感覚があるのだろうか

眠りの中で更に意識を手放す

とても心地良い…

自分が誰だか理解できなくなる…

今までのものとは違う暖かさ

パチパチと花火のように美しい光が眼前に広がり

俺の周りを明るく照らしていく…



サーヴァント『――――――――――』



光に包まれていく

…頭の中に…イメージが流れ込んでくる


















日景『――――――――!―――――――!!!!』













日景…?



泣いている…

意識にノイズが掛ると場面が切り替わる

死体の山々…そこに立つ一人の男…


これは俺…なのか…


なんなんだ…これは―――――!!!!




サーヴァント『――――っは!!…今のは……?』


目を覚ましてみても先ほどと同じ、暁色に染まった浜辺ではなく見慣れない神殿…

プラムは眠り込んだ俺に膝を枕代わりにして休ませてくれていた


プラム『私は貴方と契りを交わした…今見たものはその恩恵による物』



サーヴァント『ヤーンの契りを……記憶が…』

今までにない位ハッキリと残る記憶、現実で見てきたかのように

その場の匂い、景色、心まで把握できる


これが…記憶


プラム『時間がない…まだ完全じゃないけど…貴方なら大丈夫』


プラム体を光が包み込み魔力の粒となって消えていく

サーヴァント『待て、プラム!』



プラム『完全に同調するまで…耐えて…』



意識が引き戻される



『頑張ってサーヴァント、大丈夫!だって私のお兄ちゃんなんだから!!』



――


―――――


――――――――――



サーヴァント「―――――!」


意識が戻る


するとどうだ、今の今まで眠っていたはずだというのに砂浜を蹴って駆けている


意識よりも先に体が起きている…

酷く混乱したがそんなものどうでもいい

近くで交戦の音が聞こえる

間違いなくプラムだ…助けねば…!!!






ネメシス「この小娘ぇ!!!どこに隠しやがった!!」


プラム「……っ…!」


プラムが追い詰められている…!

幾らプラムと言えど時間がない…
出来るだけ足に魔力を収束し、大きく跳躍する


サーヴァント「はあああああああっ!!!!!」

プラム「…!」


跳躍で得た力をそのまま奴の顔面に蹴りとして食らわせてやる


ネメシス「…ギ!!!…てめぇ…サーヴァン…ギギギ!!!!」



今度は効いたようだ…その証拠に奴の顔面は微かにへこんだ

敵は衝撃に怯み、視界を整理するのに手一杯のようだ


プラム「…サーヴァント…!」

駆け寄ってくるプラムに、優しく微笑み掛けて頭に手のひらを軽く乗せ、優しく撫でる


サーヴァント「心配かけた…後は任せろ…」

プラム「…んっ…!」

何を求めているのかわかるのだろう
プラムは砂浜を駆け、戦闘に巻き込まれない位置へと退避する



ネメシス「っち―――」

どうやら敵は復帰したようだ


サーヴァント「…来い―――!!」

日景に教えてもらった構えを取る

今度は――――負けない


ネメシス「調子に乗ってんじゃねぇぞ!!!この奴隷野郎がぁ!!!」


――斬撃

容赦なく打ち込まれる針と刃の数々に冷静に魔力の流れを見て回避する


サーヴァント「…―――…そこ!」

隙が出来た――!


一定の間合いを保ち、左手で魔力を収束し

打ち込む―――




ネメシス「―――っハ!無駄なんだよ!マヌケぇ!!!」



サーヴァント「――――――!!」


直撃した魔弾は敵のボディを破壊することなく反発した


これで今までの謎が解けた


コイツには―――魔法が効かない――――




ネメシス「そらそらそらそらぁぁぁぁぁ!!!!」




繰り出される斬撃に、必死になって避けては見せるものの

その余波は肥大化し


完全に避けてもカマイタチのように体にダメージを与えてくる


サーヴァント「…っく―――」

パワーも速度も上がっている

参った…コイツは魔法が効かないばかりか、吸収し己のパワーとして使う術も持っている…

近接戦も迂闊に近づけば串刺しにされるのは目に見えている



こちらから近づけず

遠くからの攻撃も封じられている以上、圧倒的不利な状況に追い込まれてしまう



ネメシス「キキキ…死ね…スレイブ―――!!!」



止めの一撃






これは避けきれない…せっかく起き上がったっていうのに…ここまでなのか―――!!!
















プラム「サーヴァント!ウィレム展開!!」















サーヴァント「――――――!」


突然聞こえた声に体中の魔力が解放される

体から溢れ出した魔力は中和されていない為、敵の反発効果を逆手に取り大きく距離を保つことに成功する



ネメシス「―――――悪あがきを――――!!!」


再び迫りくる敵は溢れ出した魔力を吸収し、反対に加速して近づく―――


サーヴァント「ウィレム――――展開!!」

両手を前にかざし、拡散させた魔力を引き寄せる

―――魔力は纏まり形を持って剣と成す


ネメシス「―――――――――――!」


出現した剣を持つ

これなら魔力を以てせずともダメージを与えられる…!


勝負は一瞬―――


サーヴァント「―――――――――――っ!!!」


ネメシス「ギィィィィ―――――!!!!」

奴も奥の手を隠していた

自分で針先を折り、投てきの武器として隠し持っていた




突然投げられた針は肩を貫くも痛みに怯む訳にはいかない―――


サーヴァント「これでぇぇぇぇ――――――!!!!」


ネメシス「ギ―――!?ギィイイイイイイ!!!!」


剣先を敵の腹に突き刺す

敵はその一撃に耐えられず卒倒する


勝った―――



サーヴァント「―――は…――――」

プラム「――――っ!」


とてつもない戦いとダメージに体は限界にきており、倒れそうになるとプラムが駆け寄り受け止めてくれた



抱きしめ、受け止めてくれる彼女から香る甘い匂いに、心は安らぎ今にも眠りに落ちそうになった




―――――が
















ネメシス「ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ!!!!!!!!」

















耳障りな機械音を立てながら敵は再び起き上がった


突き刺した剣は、僕の戦闘意識がなくなったせいか消滅している

それが原因で再び奴を再稼働させてしまったのだろう



サーヴァント「……しぶ…とい」




ネメシス「コロ…―――――コロス!!!」


金属を軋ませる音を鳴らしながら近づく敵に、今度こそ覚悟を決めた






せめてプラムだけでも逃がさなくては…







敵が腕を振り上げると僕はプラム抱きしめ、背中を縦にして庇った



―――静寂



斬撃は僕を切り裂くこともなく、プラムも無事…


サーヴァント「…何…が」


プラムを抱いたまま、視線を後ろへと向ける


アレース「…………………」


そこには奴がいた

僕とプラムに背を向け、ネメシスと対峙する形を取っている


ネメシス「ギギ…何ノ…マネ、ダ…アレース…」




アレース「ネメシス…良く聞け、我らは利用されてるだけなのだ…このままでは世界は壊滅する…」




サーヴァント・プラム・ネメシス「「「――――!!!」」」

アレースから明かされた言葉は世界の終焉



カイライという組織ならば憂うことなく、あっという間に事を成してしまうだろう




だというのに、何故この二人は破滅を否定するのか…



ネメシス「――――!―――――ギ…――――ギ―――ギ…」




突然頭を抱え、砂浜に崩れるように座り込むネメシス




アレース「―――――ネメシス…!!どうした!」




苦しむネメシスにアレースは寄り添う


サーヴァント「…これは…」

見たことある…この光景…



―――――











サーヴァント『―――――!!――――っ』














―――――











自分だ


激しい頭痛に襲われ


言葉を発しようにも思考が出来ず


魔力の流れは止まり


体も動かなくなる



記憶の欠損…

泥の意識












サーヴァント「急いで戻れ、ネメシスの記憶がなくなるぞ…」



アレース「…―――――!貴様が…私の弟をこんな目に――――!!!」




――――――――――凍てつく瞳、

殺意


憎悪



……怖い

アレース、以前に戦った時はこんな魔力の流れを見せてはいなかった


これが…コイツの本気、なのだろうか


だとしたら…僕は、コイツに勝てたのは…まぐれだったのだろうか



それほどに、恐怖した


だが、退く訳にはいかない

目の前の者達は敵とは言え、自分と同じ苦しみを感じる者。

放っておけない



サーヴァント「……今の僕にはお前らを倒す魔力がない…殺すなら殺せ


だが、その時間にそいつの命が掛っていることを忘れるな―――!」


一瞬で考えついた命乞いも含めた脅迫

直感だった…アレースを納得させるには、自分の不利な立場を認めなければならないと…



アレース「………―――――承知した…退かせて頂く…



しかし忘れるな…借りとは思わんし、貴様らを見逃すつもりもないとな…!」



サーヴァント「―――――モタモタするな―――速く行け馬鹿野郎!!!そいつが大事なら!!!」




アレース「………―――感謝する――――」



二人は転移の魔法を唱え、砂浜を後にする


魔力の影響がなくなったからか、

幻惑として認識されていた暁色に染まる砂浜は元の路地へと戻る


プラム「………―――――」

サーヴァント「――――プラム!!!」



意識を失い、倒れ込むプラムを咄嗟に受け止める


無理もない…殺し合いに巻き込まれて普通でいる方がおかしい位だ



…そう、おかしい位…なんだ――――

僕は…既におかしくなってしまったのか…







―――――それにしても…あの力







―――――


――



プラム『サーヴァント!ウィレム展開!!』


サーヴァント『――――――!!!』



――

―――――



アレースや日景に使ったものとは違う魔力の波長…



混濁した意識の中で見た夢と、プラムと交わしたヤーンの契り…



この子は…一体何者なのだろうか…




…止そう


今はこの子が、二人とも無事であったことを喜ぶべきだ





日はとっくに暮れている


早く帰ってリリン様に報告しなければ…


眠りに着くプラムを起こさないように慎重に背負う


プラム「…――――すぅ―――――すぅ――――」



サーヴァント「………ふふ……」



お陰で助かったよ


ありがとう、プラム…


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あきゅろす。
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