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「あれ?」

くにゃり、と不意に膝に力が入らなくなった。
いきなりのことだったのでどこにも掴まることもできず、地面に崩れる。

うわ、思いっきり膝打った。
ちくしょう、なんだこれ。

廊下なので、違うクラスの人がジロジロと見てくる。
見せ物じゃないんだけど。


「#name2#…?大丈夫!?」

「ぐっち…!
なんか…立てないかも
膝に力入んないや」


神が現れた!はは、なんて力なく笑うとバカ、と怒られた。ごめんなさい。


「うーんと、どうしよう」


手を口元にやって考えるぐっち。お前はどこの探偵だ。


「あっ!泉!」


何かを見つけたかのように声をあげたぐっち。

ちょっと待て。今泉とか言わなかった?

今の状況ではうれしいけどうれしくないよ。


「おー栄口」


片手を上げて近寄ってくる泉。
あたしは出来るだけ表情見せないように俯いた。


「よす
ちょっと#name2#が膝が抜けちゃったみたいなんだよね
俺今から体育だから、保健室まで運んであげてくれないかな」


いつも以上ににこやかなぐっちに、初めて殺意が湧いた。「…おー、分かった」

「さんきゅ
じゃ、#name2#、気をつけてなー」


あーあ、もうぐっちが行ってしまったのは仕方がない。


「よし、保健室行くか」

「いいよ、放置で
泉に迷惑かけちゃうし」


多分これはぐっちにも言ってたとは思うけど、泉には遠慮したい。

…千代ちゃんに悪いし。


「は?お前な、他人からの厚意は素直に受け取っとけよ」

「でもよくあることだし」

「よくあるなら尚更だろ」

「や、でも、さ、ね?」

「なにがね?なんだよ」


小首を傾げてあたしの真似をする泉はすごく可愛くて、今のね?で可愛さ対決したら負けると思う。

そんな下らないことを考えていたら不意に浮く体。
驚いて横を向くと至近距離に泉の顔があり、声をあげる。

「きゃあっ!な、なにやってるの、いずたん!?」

「いずたんゆーな
見てわかっだろ?お姫様だっこ」
「いずたんのキャラじゃないんでないの」

「お前だって遠慮なんてキャラじゃねー」

全く余計なことを言う奴だ。


すたすたと平然と歩く泉と、抱えられているあたしに好奇の目と嫉妬の視線が送られる。
特に泉ファンの目が半端じゃない。

なんか申し訳なさと同時に優越感。
あたし性格悪いなあ。

でもね、一番気になることはね、


「千代ちゃんに誤解されちゃうよ!?」


言い終えた後自分がなにを言ったのか改めて気づいて、ハッと口に手を当てた。
呆然としている泉をよそ目に力がこもるようになった足と、手をジタバタとさせて、何か言いかけた泉を無視して駆け出した。


…こんなこと言いたくなかったのに。



あきゅろす。
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