ページ:1 「あれ?」 くにゃり、と不意に膝に力が入らなくなった。 いきなりのことだったのでどこにも掴まることもできず、地面に崩れる。 うわ、思いっきり膝打った。 ちくしょう、なんだこれ。 廊下なので、違うクラスの人がジロジロと見てくる。 見せ物じゃないんだけど。 「#name2#…?大丈夫!?」 「ぐっち…! なんか…立てないかも 膝に力入んないや」 神が現れた!はは、なんて力なく笑うとバカ、と怒られた。ごめんなさい。 「うーんと、どうしよう」 手を口元にやって考えるぐっち。お前はどこの探偵だ。 「あっ!泉!」 何かを見つけたかのように声をあげたぐっち。 ちょっと待て。今泉とか言わなかった? 今の状況ではうれしいけどうれしくないよ。 「おー栄口」 片手を上げて近寄ってくる泉。 あたしは出来るだけ表情見せないように俯いた。 「よす ちょっと#name2#が膝が抜けちゃったみたいなんだよね 俺今から体育だから、保健室まで運んであげてくれないかな」 いつも以上ににこやかなぐっちに、初めて殺意が湧いた。「…おー、分かった」 「さんきゅ じゃ、#name2#、気をつけてなー」 あーあ、もうぐっちが行ってしまったのは仕方がない。 「よし、保健室行くか」 「いいよ、放置で 泉に迷惑かけちゃうし」 多分これはぐっちにも言ってたとは思うけど、泉には遠慮したい。 …千代ちゃんに悪いし。 「は?お前な、他人からの厚意は素直に受け取っとけよ」 「でもよくあることだし」 「よくあるなら尚更だろ」 「や、でも、さ、ね?」 「なにがね?なんだよ」 小首を傾げてあたしの真似をする泉はすごく可愛くて、今のね?で可愛さ対決したら負けると思う。 そんな下らないことを考えていたら不意に浮く体。 驚いて横を向くと至近距離に泉の顔があり、声をあげる。 「きゃあっ!な、なにやってるの、いずたん!?」 「いずたんゆーな 見てわかっだろ?お姫様だっこ」 「いずたんのキャラじゃないんでないの」 「お前だって遠慮なんてキャラじゃねー」 全く余計なことを言う奴だ。 すたすたと平然と歩く泉と、抱えられているあたしに好奇の目と嫉妬の視線が送られる。 特に泉ファンの目が半端じゃない。 なんか申し訳なさと同時に優越感。 あたし性格悪いなあ。 でもね、一番気になることはね、 「千代ちゃんに誤解されちゃうよ!?」 言い終えた後自分がなにを言ったのか改めて気づいて、ハッと口に手を当てた。 呆然としている泉をよそ目に力がこもるようになった足と、手をジタバタとさせて、何か言いかけた泉を無視して駆け出した。 …こんなこと言いたくなかったのに。 |