墓石の君へ誓いの言葉を。
 数日後 埼玉県某墓地



 その日は平日であり、墓地にはまったく人の気配がなかった。
 男は周囲に人がいないのを確認すると、まだ新しい墓石に向かい、「久しぶりだね」と口を開く。
 しかし彼はその行為に、何か意味があるとは思ってなかった。自分の言葉を死者聞いているだなんて、微塵も考えてはいない。 
 彼に少しでもその墓石に刻まれている名の持ち主を弔う気持ちがあるのなら、花も持たずに手ぶらで来たりはしないはずだ。

 ならば、この男は一体なにをしにきたというのだろうか。


「ユウキが来るのは、もう少し先になりそうだよ」


 やけに親しげな口調でそう言い、彼は僅かに目を細める。


「君は彼女こそ憎んでいなくても、俺や文瀬雪子はこれ以上なく憎んでいるだろうね。大丈夫だよ。文瀬の方はそのうち俺がなんとかするから」


 ユウキの手も出来る限り患わせないよう、尽力しよう。
 約束と言うにはあまりにも軽々しい口調で、男は話を続ける。


「でも、俺はなんともならないよ。君がどれだけ俺を憎んで、他人からいくら間違っていると言われても、どうにもなってやらない。
 俺は君の親友だった彼女を愛してるからね。彼女を失わないためなら、どんなことでもしてやろう。君の死をも利用して、踏み台にさせてもらおう。
 ユウキは俺といることができれば、幸せになれると言ってくれたんだ。
 彼女がそう言うなら、俺が君を利用して彼女と傍にいようとすることもまた、君の望むところだろう?」


 だから、俺を呪い殺さないでくれよ。
 男は半分冗談でも言うように、笑みを交えながらそう言った。それから携帯電話を取り出し、何事かを確認して、くるりと墓石に背を向ける。


「次はユウキも連れてくるからね」



 そのときまでには、君の望むとおり、彼女を幸せにしてみせるから。



 (墓石の君へ誓いの言葉を。)
  


物語はまだ終われない。
11.12.31 ST!×7 end. To be continued…  

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