長編3 黒バス×TOL
第1話
フェニモールの案内のもと一行はウェルテスの街を出て遺跡船の水の民の里を目指していた。
「それにしても…これが船だなんて驚くよ…」
里を目指す道中で赤司が呟き、他のメンバーも同意する。
見渡す限り広がる広大な大地。
ウェルテスという大きな街もあり、黒子のいた世界の住人からしたら、今自分が歩いている大地が動く大陸、船だとは信じられない。
「まぁ、初めて遺跡船に来た人はみんな驚きますよね…でも僕からしたら貴方方の世界の方が驚きです…魔物はいない…話を聞く限りかなり文明も発達しているみたいですし」
赤司の言葉に情報屋として名前が知られているジェイは肯定するが、逆に黒子がいた世界に興味があるようだ。
「昔と違い、またある程度力が回復すれば僕がいた世界に行けますよ。ジェイさんも一緒に行きますか?」
黒子の言葉にジェイは驚く。
そんなに何回も違う世界に行けたりするものなのか?
そういえば黒子のテルクェスの力の詳しい説明をきちんと受けていない。
「そもそもアーリアさんはテルクェスの力で異世界に飛んでしまったみたいですが…どのような力なんですか?そんなに何回も違う世界を行ったり来たり出きるんですか?強い癒やしの力があるのは聞きましたが?」
ジェイの問いに全員が黒子に視線を向ける。
黒子は苦笑しながら、出来るだけわかりやすく説明する。
「僕のテルクェスは強い癒やしの力と時を操る力があります。ですからステラは確かに一度死にました。ですが僕の力によって体内時計が巻き戻されたんです。僕が皆さんの世界に飛ばされたのは、時を操る僕のテルクェスが空間に干渉したからです」
黒子の言葉に全員目を見開く。
つまり黒子のテルクェスは時間に干渉することで死者も蘇らすことが出来るということ。
しかも今はそのような強大な力をある程度コントロール出来ているというのだから。
「あっ…時間干渉の力は凄く体力使うので何人も一度には出来ませんよ。皆さんの世界に行ったのは僕が10歳の時でしたのでこの力を上手くコントロール出来ずに結果皆さんの世界にたどり着きました。初めは見知らぬ世界に不安がありましたが、バスケに出会い皆さんに出会えて本当に良かったと思います」
黒子の言葉は別世界にいったことに対する不満はなく、むしろ自分たちに出会えて良かったと、普段無表情な黒子は少し微笑みながら言うので、キセキの世代は勿論、相棒組も嬉しくなった。
「あの、そろそろ到着します」
先頭を歩いていたフェニモールが立ち止まり声をかけてくれた。
全員周囲を見渡すが、里らしきものはなく、見えるのは少し歩いた先にある湖だけだ。
フェニモールは湖を見ながら、「ここが現在の水の民の里です」と言う。
その言葉に黄瀬と青峰とモーゼスが首を傾げる。
「里なんてないっスよ?」
「そういえばテツは水中で呼吸出きるとか言ったな…つまり湖の中に里があんのか!?」
「つまり泳ぐしかないっちゅことやな!!ワイは泳ぎには自信があるで〜!!」
黄瀬は里なんて見当たらないことに対する疑問を、青峰は検討違いなことを、モーゼスに至っては本当に泳ぎ始めた。
それを見ていたジェイはため息をつく。
「モーゼスさんみたいな残念な思考回路をした方が貴方方にも2人いたんですね…苦労しますね…」
「あぁ、君の言葉に全く否定出きる根拠がないな」
「恥曝しなのだよ」
ジェイの言葉に赤司と緑間は申し訳なさそうな表情をする。
「おいこら!何で俺があんな変態と同じになんねぇといけねえんだよ!!」
「そうっスよ!侵害っス!少なくとも服のセンスの常識は持っているっス!」
「……確かにその通りですね…」
黄瀬と青峰の反論に一応正論もあるのでジェイは2人の反論を否定は出来ない。
「お前が黒子やステラやフェニモールの説明をきちんと理解していないから、同列に扱われるんだよ!」
「イタタタっ!ちょっと笠松先輩!何でわざわざ蹴っ飛ばしながらなんっスか!?」
「大ちゃんもだよ!テツ君達が説明してたじゃない!水の民の皆さんは結界を張って生活してるって!」
桃井の言葉に漸く2人はその話を思い出し、その時にビショビショになったモーゼスが戻ってきた。
「ゼイゼイ…里なんてなかったわい…」
「お疲れ様です。モーゼスさん、そんな格好で水泳なんてきっと凄く寒かったでしょ?」
「ステラに同意します。楽しかったですか?」
ビショビショのモーゼスを見ながら、黒子とステラがクスクス笑いながらモーゼスに問う。
モーゼスも漸く周りの空気で水の民の里の作りを思い出したようだ。
そしてやっぱり黒子の時々でる毒舌はステラ譲りだと実感した。
「なぁ…赤司」
「何ですか?黛さん」
「黒子やステラ見ていて思ったんだけど……やっぱり2人の家族のシャーリィっだったか?腹黒いんだろうな…」
「そうだね…俺もそう思うよ」
場の空気が微妙になりフェニモールが気を取り直すように「じゃあ結界を解きますね」と言って手を上げる。
フェニモールが手を上げると何かに反応するように、目の前の湖の上に集落が全員の視界に映った。
黄瀬とか青峰や火神はすげーとハシャいでいたが、静かにするように赤司に注意され黙り込む。
「じゃあ、皆さんどうぞ」
フェニモールの案内のもと一行は里の中に入っていった。
黒子はあえて最後尾に立つ。
普段コントロールしている存在感を少しずつ出しながら進むのだった。
中に入れば確実に水の民の里に陸の民が大勢来たのだ…混乱は予想出来る。
その時に混乱を鎮められのは自分のこのメルヴィオという存在だけだと黒子は思うから。
赤司視点。
里の雰囲気は独特で住人が全員綺麗な金色の髪に、ステラやフェニモールが着ているような独特な服を着ている。
しかしあまりそのことを気にする余裕はなかった。
はっきりいって予想以上だった。
黒子やステラやフェニモールから水の民と陸の民の溝を聞いて理解していたのだが、自分たちが里に入った瞬間に向けられた負の感情は赤司の予想を越えていた。
まるで仇を見る視線、かつてキセキの世代達はその才能に嫉妬した者達に負の感情をぶつけられたことがあるが、こんな殺意までぶつけられたのは始めだ。
視線だけで人が殺せるなら自分たちは間違いなく殺されている。
「何で陸の民がこんな大勢…」
「いや…気持ち悪い…同じ里に陸の民がいるなんて」
「何で陸の民なんかがここに来るんだよ!」
「フェニモール!貴方何で陸の民なんか連れてくるの!?水の民を裏切るつもり!?」
次々と向けられる負の感情に普段冷静な自分も対処が少し遅れた。
脳内では『僕』も何だかんだで驚いているようだ。
しかし負の感情が自分たちに勇気を出して普通に接してくれているフェニモールにまで向けられようとしている。
流石にそれは申し訳ないと赤司は前に出ようとしたが、その時に後ろから「皆さん」と声が聞こえた。
振り返ると普段影が薄いと言われている黒子が、ここにいる誰よりも存在感を放ち、先頭に立つ。
「…黒子…?」
自分は呆然とその名前を呼ぶことしかできなかった。
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
「皆さん、落ち着いて下さい」
黒子の声に容姿に騒いでいた水の民達は驚きで目を見開き、静かになった。
創我と同じ水色の髪に青の瞳…集まっていた水の民の誰かが「メルヴィオ様?」と呟く。
その呟きに黒子は傾きその場を支配する。
「そうです。僕の名前はアーリア・ウェルリアン…メルヴィオです。この髪の色が何よりの証拠になると思いますが」
黒子の言葉に一瞬沈黙になったが、すぐに大歓声が起きる。
「メルヴィオ様だ!メルヴィオ様がお戻りになった!」
「それに見て!きっとメルヴィオ様の力なのね!ステラも帰ってきているわ」
「急いで長やメルネス様にご連絡を!」
集まっていた水の民達も奥に向かって行ったり、自身の家に引きこもったりと、とにかく陸の民の姿を観たくなかったのだろう。
そんな時。
「騒がしいと思ってきたら、まさか再び君に出会えるとは思ってなかったよ」
聞こえた声に視線を向けると50代ぐらいの年齢の初老の男性が立っていた。
「お久しぶりです。マウリッツ長、メルヴィオ只今帰還しました」
黒子の言葉を聞きマウリッツと呼ばれる長は「よく帰ってきてくれた」と言い笑顔を向ける。
マウリッツはウィル達や赤司達を見て、話が長くなりそうと悟ったのか、一行を里の集会所にあつめるのだった。
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