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長編3 黒バス×TOL
第7話


「…別の世界…ですか…」

黒子が三年間行方不明であり、シャーリィより年下であったはずなのに、現在の年齢がシャーリィより上の16歳、更にステラが無事な事情を全て説明し、フェニモールが驚いたように目を見開いていたが途中で説明を途切れさせようとはせずに真剣に聞いていた。

全て聞いた上で呆然と先ほどのように呟いたのだ。

「…驚きますよね…僕も貴方の立場だったら驚きますよ」

「いや、お前の表情筋いつも仕事放棄してんじゃん」

とりあえず黒子の言葉に火神は突っ込む。

火神の突っ込みには全員同意した。

「…すみません…メルヴィオ様にも何か事情があるんだなぁと思ってましたが、話が唐突過ぎて……でもわざわざこんな嘘を言うはずもありませんよね……驚きましたが、私は皆さんの話を信じます」


フェニモールは微笑みながら、黒子の話を信じてくれた。

その言葉に全員ホッとしたが、フェニモールは申し訳なさそうな表情をしながら「…すみません…」と謝罪する。

「フェニモール?」


フェニモールの謝罪の意味が分からず黒子は首を傾げる。

「メルヴィオ様のご友人の皆さまが…残忍な陸の民と違うのは頭では理解しているんです……でも私やっとウィルさん達と普通に話せるようになったばかりで……皆さんの容姿は陸の民そのもので、まだ少しお話するのは怖いです…皆さんが悪いわけでもないのに……」

フェニモールは震えながら自分の身体を抱きしめる。

その時に服に隠れて見えてなかった傷だらけの跡が見えて黒子はフェニモールに何があったのか察して、他のメンバーも傷を見て目を細める。

「……フェニモール…貴方の住んでいた里も陸の民に襲撃されたんですか?」

黒子の問いにフェニモールは「…はい…」と傾く。

初めて聞くフェニモールの事情にウィル達も顔を歪める。

「…私の住んでいた里の仲間は、襲撃時に偶然里にいなかった妹以外はみんな捕まり…殺されました…捕まった当初は大勢いた仲間も…日が経つごとに少なくなって……私…1人だけになったんです…今でも思い出せます…暗い牢屋の中での仲間の悲鳴や…死が迫り来る恐怖……怖くて怖くて仕方なかった……私1人だけになって暫く経ってあの子…シャーリィに出会ったんです」


フェニモールの体験は黒子たちのいた世界では、あまりに残酷で経験することのない出来事。

自分の住んでいた故郷を襲撃され、仲間も全て殺され、唯一の妹の安否もわからない…死が迫り来る恐怖…想像することしか出来ないが、今目の前にいる少女はどれだけの勇気を振り絞って自分たちを前に話をしているのだろうとキセキの世代や相棒達は思った。

黒子やステラの里も襲撃され、それがきっかけで黒子は自分たちの世界にやってきたのだが、襲撃という単語事態、聞き慣れないのだ。

自分たちの世界は平和なんだと実感する。

「初めはシャーリィに出会った時に久しぶりの同世代の仲間の姿に安心しました。でも同時に疑問に思いました…何でこの子は陸の民の服を着ているんだろうって……でも潜入任務か何かかと思いましたが、あの子ずっと私に言うんです。陸の民にも良い人はいる…みんながみんな悪い人じゃないって…その言葉を聞いて私は確信しました。この子は陸の民の街で暮らしていたんだって…」

フェニモールは一息入れる。

同時のことを思い出しているのだろう。

「私はシャーリィに言いました…裏切り者…水の民の恥だって…それからはあの子と会話はなかったけど皆さんが救出に来てくれたゴタゴタで逃げ惑うなか、あの子がメルヴィオ様…貴方がいない以上残された水の民の導きの星であるメルネス様だと知り…私はあの子を責めました。だから私にメルヴィオ様を先ほどのように責める資格はないです…」

フェニモールはシャーリィがメルネスだとわかった瞬間のことを思い出す。

メルネス様とメルヴィオ様が産まれた…メルヴィオ様は行方不明だがメルネス様は生きている。

それは捕らわれの身であったフェニモールの希望だった。

でも希望だと信じていたメルネス様は、目の前の陸の民にも良い人はいると自身に訴えてくる水の民の裏切り者だった。

フェニモールは二度裏切られた気持ちになった。

『私はずっとメルネス様を信じていた…行方不明のメルヴィオ様に変わりどうか水の民をお導きくださいってずっと……それなのにあんたは!私の仲間が殺されている時にあんたは何をしていたっ!陸の民の街で暮らしていた…陸の民にも良い人はいる…?…ふざけるな!あんたがグズグズしていたせいでこっちは仲間を全員殺されたんだ!メルネス様なら…メルヴィオ様に変わり…さっさとメルネスらしく使命を果たしなさいよ!!』

同時フェニモールがぶつけた憎しみをシャーリィは逃げも言い訳もせずに受け止めた。

そしてただ一言「ごめんね」と言って囮になり再びシャーリィは捕まり、フェニモールはシャーリィを救出に来たセネルやウィル達に救出された。

その中で本気でシャーリィを助けようとするウィル達の姿にシャーリィの言いたかったことが少しずつ理解出来たのだ。

そして戦争が終わり、再び再会して話をしていく内にシャーリィをメルネス様という神秘的な存在ではなくただの同世代の女の子に思えた。

そして他の水の民と違い、まずメルネスという言葉を排除してシャーリィ個人と過ごしていくと、ただの皆の期待に応えようと必死なシャーリィを観ていつの間にかあの子を支えたいと思うようになったのだ。

フェニモールは自分の気持ちも隠さずウィル達にも赤司達にも話した。

フェニモールの気持ちはステラも嬉しく感じた。

自分の妹と弟のような存在のアーリアは水の民にとっては希望であり、2人を一個人として接してくれる人はいない。

それがステラには悔しかったし、辛かった。

大切な妹や弟にすがりつく大人たちの姿にステラは何度も何度も叫びたくなった。

私の妹はメルネス様なんかじゃない!シャーリィ・フェンネスよ。

私の弟もメルヴィオ様なんかじゃない!アーリア・ウェルリアンよ。

2人がメルヴィオ様、メルネス様と呼ばれる度にステラは2人の個人が無くなる不安を感じていた。


それは弟セネルや2人と接する内に2人を個人としてみて、大切な幼なじみになったワルターも同じだった。

だからこそフェニモールの気持ちは嬉しくステラはフェニモールの手をとり「ありがとう」と改めてお礼を言う。

その様子を見ていた赤司達はフェニモールの傍に来て頭を下げる。

「話してくださりありがとうございます。きっと…今オレ達と話すのにも勇気がいるはずなのに…貴方を傷つけることだけは決して致しません…誓います」

赤司はフェニモールの目をしっかり見て答え、フェニモールも赤司の真剣さが伝わったのか、「少しずつ慣れていきます」と手を差し伸べてくれた。

赤司はその手を握り返した。

漸く空気が落ち着いたところで、ウィルがフェニモールがウェルテスの街に来た理由を尋ねた。

「私1人じゃあの子を支えることが出来なくて…出きるのは話し相手になることだけ…その時にあの子時々嬉しそうに呟くんです。ウェルテスの街で暮らして日々は楽しかったと……だから皆さんなら…特にあの子と三年間暮らしていたウィルさんなら少しはあの子も気が紛れるかもしれないと思って…皆さんを里にお誘いしようと思って来ました。お姉さんさんやメルヴィオ様がいらしたのは予想外でしたけど…」

苦笑するフェニモール。

「貴方がそこまでシャーリィを大切にしてくれて嬉しいです。…あと出来れば僕もメルヴィオではなくアーリアと呼んで貰えませんか?僕も…メルヴィオである前にアーリアですから…」

黒子のお願いにフェニモールはキョトンとして苦笑しながら「アーリアさんで宜しいですか?」と尋ねるので黒子は傾く。

「ありがとうございます。フェニモール…では、水の民の里に向かいましょうか。まだ僕もステラもこの遺跡船での里の位置を知らないので案内を宜しくお願いします」

「はい、わかりました。ただ…」

黒子の言葉にフェニモールは傾くが少し表情を暗くする。

「お察しかもしれませんが、水の民は陸の民を良く思っていないのが大半です…ですから…里では皆さんに辛くあたる人もいますし、負の感情も向けられると思います……戦争の後だから余計に警戒しているので…私も間に入りますが……それでも来て下さりますか?」

フェニモールの言葉にウィル達は初めて水の民の人にあった時を思い出し、赤司達は負の感情というのはキセキの世代にとっては少し想像出来るし、相棒組も決して良い感情を向けられないのも理解している。

でも自分たちが行くことでシャーリィを少しでも支えれるならとウィル達は了承し、赤司達もこの世界に来た時にいろいろ覚悟はしている。

フェニモールがシャーリィを支えたいと思うように赤司達も黒子を支えたいと思いこの世界に来たのだから、たとえ負の感情を向けられようと逃げるつもりはなかった。

全員が傾き、フェニモールの案内のもと水の民の里に向かうことになった。

里に向かう前にキセキの世代も相棒組もそれぞれの内の力を確認し、それぞれにあった武器を購入した。

高尾はおもしろ半分で選んでいたが。

ちなみに全員が爪術の才能があることにウィル達は内心驚いた。

赤司や青峰は少し教わるだけで騎士であるクロエと互角に打ち合えるようになったし、紫原はある程度の説明を受けたらいくつかブレス系の技を使えたし、黄瀬に至ってはウィルはノーマのブレス系爪術を観るだけで直ぐに習得した。

ちなみにウィルとノーマの爪術の実験体になったのはモーゼスだ。

緑間も指先の器用さで双銃をある程度使いこなすし、他のメンバーも時間はそんなにかからず自分のスタイルを理解した。

ちなみにエレガントヤンキーこと氷室は迷いなくナックルを購入し、モーゼスをサンドバック代わりにしていた。

ちなみに黛に至っては持ってきていたラノベが武器だ。

武器というより集中力が増すらしいが、赤司はブレないやつだと内心思った。

ちなみにウィル達の心境は「あれ…君たちがいた世界わりと平和だったんだよね?なのに何ですぐに扱いなれるの?」と言った感じだ。

とにかく実験体にされたモーゼスが回復してから水の民の里に向かうのだった。



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あきゅろす。
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