長編3 黒バス×TOL
第4話
黒子のテルクェスによってステラとキセキの世代とその相棒たちは黒子の産まれた世界に戻ってきた。
懐かしく感じる創我の気配…あぁ、ここは確かに自分が産まれた世界だ。
一方キセキの世代や相棒達は見知らぬ世界に少し興奮していた。
黄瀬や青峰、高尾は「凄い!RPGの世界みたい!」と興奮していた。
興奮組以外は自分たちの世界とは違う自然が沢山ある世界に心が安らいだ。
まぁとにかくずっとここにいる訳にもいかないと黒子は思うが、ふとあまりにはしゃいで笠松に蹴り飛ばされる黄瀬を見てあることを考える。
「黄瀬君、少し来てください」
大好きな黒子に呼ばれ黄瀬はまるで忠犬のように黒子の傍に駆け寄る。
そんな黄瀬の姿に全員、『犬かよ…』と呆れるが、ステラだけは反応が少し違う。
「ふふ…黄瀬さんってまるでワンちゃんみたいですね…私の周りにはいないタイプだから…調教しがいがあるわね。アーリアが頼んだら何でも引き受けてくれそうだし、今度黒魔術の実験体にもなってもらおうかしら」
「…………………」
ステラの言葉を全員聞かないふりをしたいが、聞こえてしまった以上忘れることは出来ない。
全員無言で黒子を見つめる。
「あぁ、ステラは妹のシャーリィと里では腹黒姉妹と呼ばれてました。幼いシャーリィや僕に黒魔術の本を絵本代わりに渡す人物ですからね」
『『『黒子が時々毒舌になるのはこの人のせいか!?』』』
全員の心が一致した。
しかし全員がステラの発言に震えているかというとそうではない。
赤司は通常運転だ。
いやむしろ素晴らしい魔王様の笑顔だ。
「黒魔術の実験か…実に楽しそうだね…僕も涼太みたいな駄犬を調教するのは楽しそうだね。でも俺は言うことを聞かない駄犬は大嫌いだけどね」
「言うことを聞くまで調教すれば良いだけです。赤司さんとは楽しそうな話が出来そうだわ」
「あぁ、俺もそう思うよ」
腹黒い姉妹の姉と魔王との間に何かが生まれた瞬間だった。
てゆか今、さり気なく僕司のほうも表に出てたよな!?とキセキの世代達は心の中で叫ぶのだった。
「はぁ…赤司くんとステラが気が合うのは何となく想像してました…それより話を戻しますが黄瀬君、僕のテルクェスの力で君の髪色変えますね。金色の髪はこの世界じゃ水の民の証みたいなものなんで…ただてさえ無駄に目立つ君は今の髪色のままでは水の民をよく思ってない陸の民に見つかればアウトです」
黒子はそう言いながらテルクェスを出して黄瀬の金色の髪を目立たない黒色に変える。
「…何か髪色が変わっただけで無駄なシャララオーラがなくなったな…」
「黄瀬ちんずっとその髪色でいれば〜」
「シャララオーラがなくなると普通の優等生に見えるな」
上から青峰、紫原、笠松が呟く。
「みんな酷いッス!」
黄瀬は当然文句言うが全員無視だ。
「ところでステラ、漸く本題に入れますが…ここ遺跡船ですよね?少しだけ風が強いので…」
「恐らくそうね…ここは確か陸の民の街ウェルテスの近くよ。三年間遺跡船と同調していたから何となくわかるわ」
「そうですか…陸の民の街ですか…あまり傍に行かないほうが良いかもしれませんね」
黒子個人としては陸の民に複雑な感情はあれ、ハッキリと感情を表には出さないが、やはり水の民である以上、陸の民には警戒してしまう。
そう教育されてきたのだから。
そんな黒子の気持ちを理解したのかステラは「ウェルテスの街なら大丈夫よ」と言った。
「…?」
「ウェルテスの街は三年間、セネル、ワルター、シャーリィが暮らしていた街だもの」
「シャーリィはともかくあの陸の民を心から憎んでいたセネルとワルターがですか!?」
水の民として生まれた以上、陸の民に対する負の感情は勿論あるが、ステラやシャーリィはそれを表に出さないが、セネルとワルターは陸の民は全員残虐な人種なんだと固定概念になっている。
特に幼き頃に両親を陸の民に殺されてからは、尚更だ。
「そういえばステラ言ってましたね。あの2人は変わったって…何があったんですか?」
「…三年前のあの襲撃の時に貴方が囮になったあと私たちも結局囲まれたわ。とっさにセネルが安全な場所にって無意識にテルクェスを使ってシャーリィとワルターは遺跡船のウェルテスの街の近くに飛ばされたの。その後は私がセネルを2人の傍にって思いながらテルクェスを使ったからセネルは2人に合流したの」
ステラの話を黒子は真剣に聞く。
自分が異世界に飛ばされてからの大切な家族の情報だ。
他のメンバーも口を挟まない。
というよりこの世界に来たばかりで会話に加われないというのが現状だ。
ただ2人の会話やこの世界に来る前の黒子の説明で1つだけわかったことがある。
陸の民と水の民は自分たちが思っている以上に溝があり、水の民は陸の民を強く憎んでいるということ。
それだけしか情報がないので、黒子とステラを覗くメンバーは2人の会話を聞いていた。
「私もあの襲撃のあと暫く意識を失っていたんだけど、遺跡船と同調している内にセネルやシャーリィやワルターのことも無事だということが確認出来たわ…水の民、陸の民に偏見がない優しい陸の民の人に保護されたみたい。シャーリィはすぐにウェルテスの街に馴染んだみたいだけど、セネルとワルターは一年以上は警戒していたけど、自分たちの為に必死に動いてくれる陸の民の男性を見て、徐々に陸の民も人それぞれだと思ったみたい」
「…そうですか…彼らが…」
ステラの言葉に黒子は嬉しくなった。
その時に周りに殺気を感じた。
どうやら盗賊に囲まれているようだ。
あまりこちらの話を聞きそうにない盗賊に黒子とステラは戦闘体勢を取る。
黒子はもとの世界では力の使いすぎと、創我の気配がなかった為に体力がなかったが、この世界では黒子はアーツ系としては弓も使えるし、もう1つの攻撃のテルクェスで戦うことが出来る。
ステラもブレスを使い黒子を援護するかウルフの数が無駄に多い。
「アーリア!危ない!」
「「「黒子!」」」
ステラの悲鳴を聞いて赤司はとっさに倒された盗賊が持っていた剣を奪い、黒子前にたち剣先を喉元に当てる。
その赤司の威圧感に盗賊たちは統率なく逃げていった。
「赤司っち剣も扱えたんッスね…」
その黄瀬の問いに赤司は首を横にふる。
「剣を握ったのは初めてだ。しかしお前たちは感じないか?この世界に来てから身体の内から力を感じるんだ」
赤司の説明を聞き黒子はある仮説が生まれる。
赤司には爪術の才能がある。
恐らくアーツ系爪術師タイプ。
「…皆さん…ひょっとしたら全員爪術師としての才能があるかもしれませんね」
「爪術っていうのは何だ?」
「僕たち水の民が使うテルクェスと同じような力です。前衛向きのアーツ系爪術、後衛向きのブレス系爪術にわかれます。本来は陸の民が持つはつがないんですが最近は少数でも陸の民でも爪術を使える人がいるみたいですね」
黒子は赤司の傍に行き、赤司が無意識にとった剣を見つめる。
「赤司くんは剣と相性が良いみたいですね。赤司くんならこの辺の魔物ならすぐに倒せると思います」
「そうか…この力が少しでも黒子の役に立つんだな…人に剣を向けるのは抵抗を感じるが、この世界に来た時に覚悟はしていた…だから黒子…心配するな…」
そんな赤司の後ろ姿に黒子は頼もしさを感じた。
その時、ウェルテスの街から1人の男性が走ってくる。
「お前たち無事か…盗賊団が現れたときいて来たんだが……って……ステラさん!!生きていたのですか!?」
現れた男は体格も良く眼鏡をかけている男性で、そういえば夢の中でいたような気もすると黒子は思った。
目の前で消えた人物、遺体が無かったので確認はとれなかったが、艦橋でのことを水の民の長であるマウリッツに話すとステラは死亡したものとなったのだ。
だからこそ目の前にいる男、セネルやワルター達と共にステラとシャーリィ救出の為に尽力したウェルテスの街の保安官ウィル・レイナードは驚いた。
ステラの後ろにもいるカラフルな頭の少年達にも驚いたが。
黒子はステラひ小声でウィルのことを尋ねて、ウィルとの出会いがセネルやワルターの考えが変わるきっかけになったのだと知った。
「始めましてはウィルさん。僕は黒子テツヤであり、アーリア・ウェルリアンです。シャーリィ達が三年間お世話になりました」
ぺこりと頭を下げる黒子にウィルは彼が名乗った名前に驚く。
ただてさえ死んだと思われていたステラが目の前にいて、ステラと共にいる青年は三年間シャーリィ達と共に行方を探していた青年だ。
「…何か事情があるようだな。ここではなんだ…少し落ち着いた場所に…俺の家が良いだろう。そこで事情を聞こうか」
ウィルはそう言って一行に背を向けた。
「あぁ、そういえばきちんとした自己紹介をしていなかったな…俺はウィル・レイナード。ウェルテスの街で保安官をやっている…君たちの身の安全は保証しよう」
ウェルの案内のもと黒子たちはウェルテスの街のウィルの自宅に招かれたのだった。
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