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長編3 黒バス×TOL
第3話


ステラのうめき声が聞こえ、黒子はステラの顔を覗き込みながら「ステラ…ステラ…?」と何度も呼びかける。

その声に反応するようにステラの瞳は開き綺麗な青色の瞳が、ぼんやりと天井を見つめる。

「…ステラ…」

そして自分の名前を呼ぶ声に無意識に反応してステラは視線を向けると、そこには綺麗な水色の髪に青の瞳…三年前に行方不明になった大切な弟のような存在と同じ雰囲気の青年が自分を見ていた。

「…アーリア…なの?」

ステラは希望も込めて確かめ、黒子も僅かに微笑みながら傾く。

「はい、僕はアーリアです。あなた達の弟の…アーリア・ウェルリアンです。お久しぶりです、ステラ…」

黒子が自分の大切な家族の1人だとわかると、ステラはカバっと起き上がり黒子を抱きしめる。

「…アーリア…良かったわ…三年前から貴方は行方不明で…ずっと…ずっと心配してたの。でも元気そうで良かった…アーリアは三年前のあの日にこの世界に来たのね?」

「流石ステラです。よくここが異世界だとわかりましたね」


「だって創我の気配を感じないんですもの…うん?そういえばアーリアは私たちのなかで一番最年少だったわよね?随分と成長していない?」

ステラの疑問はもっともだ。

ステラがアーリアと別れたのは三年前、アーリアが10歳の時だ。

しかし今の黒子はとても13歳の少年には見えない。

「ステラ…あの里の襲撃から何年が経ったんですか?」

「三年よ…いろいろあったけど、この三年であのセネルやワルターまで陸の民に対しての認識を改めているのよ!陸の民には残忍な陸の民もいれば良い陸の民もいるって…それで話が逸れたけどアーリア…貴方はこの世界にやってきて何年の年月が経っているの?」

「僕は六年の年月が経っているので今は16歳です。シャーリィより年が上になりましたね…そうだステラ、この世界で出会った僕の大切な友人達を紹介させてください!皆さん、本当に僕たちを偏見や差別なく接してくれるんです」

黒子の嬉しそうな表情にステラも嬉しくなる。

自分たちの世界にいた時にアーリアはメルヴィオという立場から水の民たちからは希望を押し付けられ、アーリアという名前を呼んでくれる人も少なかった。

『メルヴィオ様、どうか我々水の民をお救い下さい』

『メルネス様と共に私たちを陸の民からお救いください』

『私の娘が陸の民に殺されました、あなた様が真にメルヴィオとして覚醒したら娘も喜びます』

メルヴィオ…『輝く生命』という意味を持つ水の民にとって神秘的な存在。

だがそこにあるのはメルヴィオという存在だけで、アーリアとしての個人の意志はなかった。

いくら自分たち4人がアーリアとして接していても時々寂しそうな表情をしているのをステラは覚えている。

育った環境が故にアーリアは人見知りだ…だからこそ笑顔で自分にこの世界の友人を紹介したいと言ったアーリアにステラは嬉しくなった。

たとえ離れていた三年間が悲しくても、きっと今のアーリアの表情を見れば、シャーリィもセネルもワルターも同じ反応するだろう。

だからこそステラは弟のように可愛がっているアーリアに笑顔を与えてくれた、アーリアの友人達に感謝の意味も込めて頭を下げる。

「…ありがとうございます…この子に大切な友人が出来たこと本当に嬉しく思います…貴方たちのおかげでアーリアは今は幸せそうに笑えているんですね」

ステラの言葉に赤司が首を横に振る。

「俺たちは黒子が…貴方の弟がこの世界に来てくれたから今こうして笑えているんです。黒子の誠名は『希望の絆』でしたか?むしろ俺たちが貴方にお礼を言いたい…黒子に出会わせてくれて…ありがとう…」

「俺もッス!黒子っちに出会えて本当に嬉しかったッス」

「黒子がいたから俺は様々なことを学ぶことが出来た。…感謝しているのだよ」


「テツに出会えたからバスケが楽しくなった。辛い時期もあったけど、テツがいたから俺は再びバスケに向き合うことが出来た」

「俺も黒ちんに出会えて良かったよ〜時々喧嘩するけど、それでも一生にいたいぐらい大好きなんだもん」

上から赤司、黄瀬、緑間、青峰、紫原が黒子に出会えて良かったと口々に話す。

「ステラ、僕はこの世界で黒子テツヤとして沢山の大切な人に出会いました。僕の一生の友です」

アーリア、黒子の言葉を聞き、ステラはキセキの世代の前に行き、しっかりと目を向き合う。

「弟があんなに笑顔を見せてくれたのは姉として嬉しい限りです。だから…私もきちんと皆さんに紹介しますね。私とアーリアには血の繋がりはありませんが大切な弟です。私はステラ・テルメス…年齢は17歳です。宜しくお願いします」

ステラの自己紹介に続きキセキの世代や各校の先輩達や監督も自己紹介をする。

「ねぇステラさん、テツ君から聞いたんですけど、水の民の皆さんって誠名っていう素敵な名前を持っているんですよね?是非教えて欲しいです!」

「私も!私も知りたいわ!ステラちゃんの誠名…」

ステラは少し考える素振りをするが、アーリアが信頼している人だ…大丈夫だろうと名乗ることにした。

「私の誠名はテルメス『始まりの星』という意味があります」

「そう、綺麗な名前ね…そういえばステラちゃんもテルクェス使えるのよね?見せて貰えるかしら?」

実渕の言葉にステラは小さなオレンジ色のテルクェスを出す。

そのテルクェスを見て黒子は合宿所に来る前に見た夢を思い出した。

だからせっかく和やかな雰囲気になっているところ悪いが話題を変える。

「ステラ…僕が行方不明になってからの三年間…詳しく教えてくれないですか?」

その言葉にステラの表情が暗くなる。

でも話さければいけないことだ。

「これから話すことは決して楽しい話ではありません。それでも構いませんか?少しでも嫌だと思ったらこの部屋から出て行って下さい。これは私とアーリアの世界の話なので」

少し冷たく話すステラは、この優しげな人々に自分たちの世界の闇をあまり聞かせたくなかった。

アーリアからある程度は聞いているだろうが、うまくは伝わっていないだろう。

陸の民の残虐さも水の民の憎しみの心も。

「確かに貴方と黒子の世界の問題なら俺たちは部外者になるだろう。だが黒子は俺たちの仲間だ…俺はどんな黒子でも受け入れたいし、どんなに暗い事実があっても黒子の産まれた世界についてしりたい」

お前たちもそうだろ?と赤司はキセキの世代たちに声をかけ、キセキの世代たちも傾く。

その覚悟を決めた目をみてステラはこの世界に来るまでにあった陸の民の国クルザント国と水の民と陸の民の連合軍との戦争の話をした。

「私は直接戦争に参加した訳じゃないわ。三年前…アーリア…貴方が囮になったけど結局逃げ切れなかった。私とセネルが敵を引き受けてシャーリィとワルターを逃がしたわ。でも多勢に無勢…敵の攻撃は油断した私に向かってきてセネルは私を庇い倒れたわ…私は必死でセネルの治療をしてセネルをシャーリィ達のところまでテルクェスで運んだけど力尽きて捕まってしまった。それから三年間はアーリアやシャーリィの代わりに遺跡船を動かす動力にされたわ」

目を覚ますことはなかったがステラの意識は常に覚醒し、遺跡船全体を見ていた。

「遺跡船とは何なのだよ?」

途中で出てきた聞いたことのない単語に緑間は首を傾げる。

「緑間くん、遺跡船とは大昔に作られた動く大陸です。遺跡船には陸の民の街もありますし…皆さんが想像しているような船ではありませんよ。…ステラ…クルザント国の狙いが遺跡船なら目的は遺跡船の兵器創我砲ですか?」

「そうよ…私とシャーリィが繋がれたわ…」

またも知らない単語に一同は首を傾げる。

「創我砲とは…それほど協力な兵器なのか?」

「はい、赤司くん。国を1つ消滅させるほどの威力がありますが、厄介なのは創我砲のエネルギーは僕たち水の民の命なんです。一発撃つだけで何十人の水の民が犠牲になったと聞きます。ステラやシャーリィは強い力を持っていたから命は落とさなかったようですが…」

その言葉にステラは首を横に振る。

「私は確かに限界だったわ。三年間遺跡船の動力にされ、創我砲で生命エネルギーを吸い取られ、創我砲を止めるために力を使い…死を覚悟したわ…でもその時に貴方のテルクェスの波動を感じたのよ…」

「…じゃあ、あの夢は現実だったんですね…良かったです…本当に良かった…ステラが死ななくて本当に…」

「…アーリア…」

ステラは無言でアーリアを抱きしめる。

そしてステラの話を聞き黒子はある決意をした。

恐らく近いうちにおこるであろう水の民と陸の民の生存権をかけた戦いが始まる。

創我の半身たる自分がいつまでも、楽しい幸せな世界に留まる訳にもいかない。

『それに僕は訴えてみたい。陸の民にも可能性があることを…創我に…それは半身たる僕の使命』

黒子は皆の方に身体を向けて深々と礼をする。

「今までありがとうございます…皆さんと一緒に過ごせたのは僕の宝物です。…だから…この温かい気持ちを胸に僕はあちらの世界に戻ります。あちらの世界でやりたいこともできましたから!今までありがとうございました!」

黒子の礼に反応はそれぞれ違うがため息をつき、青峰が黒子の頭を軽くしばく。

「青峰くん?」

「このバカテツ、何を1人で背負い込もうとしているんだよ。俺たちのことを大切な友達で仲間って言っただらうが」

「そうッスよ!黒子っち!黒子っちが俺たちをそう思っているように俺たちも黒子っちが大好きッス!」

「友が困っている時は力になる。それが人事を尽くすということなのだよ」

「俺たちはね〜黒ちんが大好きなの。だから黒ちんの力になりたいの」

「俺に仲間に頼ることを教えたのはお前だろ?なら今度はお前が俺たちを頼れ」


キセキの世代全員に言われ、黒子は嬉しくて前を向けない。

自分の為に異世界まで来てくれようとする彼ら。

勿論彼らだけでなく、彼らの相棒や桃井さんも来てくれることになり、黒子は頼もしい気持ちになった。

今なら何でも出来る…そんな気持ちだ。

そんなアーリアをステラは優しげな表情で見つめていた。

黒子は改めて全員の目を見て長い時間を得て回復したテルクェスの力を使う。

大部屋からは数十人の姿がいなくなった。

黒子についてTOLの世界にいった人。

誠凛火神
海常黄瀬、笠松
秀徳緑間、高尾
桐皇青峰、桃井
陽泉紫原、氷室
楽山赤司、黛です。



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あきゅろす。
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