[携帯モード] [URL送信]

長編3 黒バス×TOL
第3話

黒子に問いを投げかけた赤司の声量は決して大きくなかったが、全員の耳に確かに聞こえた。

その問いに黒子はまさかマウリッツの呟きを聞こえていたとは思わず、少し表情に変化をが見られた。

「…アーリア…」

思わずシャーリィが黒子の本来の名前を呟く。

何故なら赤司が聞いた儀式とは、もしも黒子がこの世界に今の時期に戻ってこなかったら、メルヴィオの代わりとしてメルネスであるシャーリィが受けるべきものだから。

黒子と赤司の間に少しの間、沈黙が流れる。

自分の力になりたいと彼らは、自分と共にこの世界に来てくれたのだ。

きちんと話すべきだと黒子も理解している。

しかしこの儀式について深くしれば優しい彼らは必ず反対するだろう。

しかし目の前の赤司や長い付き合いのあるキセキのメンバーにはごまかしはきかないと黒子は思っていた。

黒子は俯き少し考える。

そして決意したのかキセキのメンバー達の表情を1人1人見ていく。

そんな黒子の様子をステラとシャーリィは不安そうに見守っていた。

やがて黒子はゆっくりと話し出す。

「マウリッツさんの仰っている儀式とは託宣の儀式のことです。その儀式をすることで僕は半身である創我と同調し、真のメルヴィオてして目覚めます」

黒子の言葉にキセキメンバーは黒子の真の力を想像出来ない。

今でも強い癒やしの力や時に干渉する強い力を戻っているのに、それ以上の力が想像出来ない。

それと黒子の説明に疑問が生まれる。

黒子のいう創我とは一体どういう存在なのか?

黒子は創我の半身として生まれたから水の民を導く使命がある。

赤司はやはりこれからの黒子の話を聞いて理解するために、尋ねることにした。

「黒子、そもそも創我ってなんだい?話を聞く限りは水の民にとって神様みたいな存在みたいに思えるけど…」

「そうですね…創我とは僕たち水の民を産み出した存在…母のような存在です。創我は海です。この世界を覆っている海そのものです。皆さんのいた世界とこの世界の違いは創我に海に意志がないことです。黄瀬君、青峰くん…きちんと理解出来ましたか?」

黒子なりにわかりやすく説明したが、このキセキメンバーのバカツートップの2人が理解しているのか怪しい。

黒子の問いに2人ともしどろもどろになりながらも、何とか理解出来たと答える。

その様子に若干不安を覚えるが、とりあえず説明を続けることにします。

「創我に海に意志があると言いましたが、誰もが創我とコンタクト出来る訳ではありません。遺跡船にいたからわかりませんが、この世界の海は常に荒れ狂っているんです。それは創我の怒りそのものなんです。そしてそんな水の民にとっての母のような存在である創我と意志の疎通が出きる人が2人います」

黒子はシャーリィをチラリと見る。

「1人はシャーリィです。彼女はメルネスと呼ばれ、創我の声を聞きその意志を代行することが出きるんです」

黒子はひと呼吸をしてから話を続ける。

「そしてもう1人は僕…メルヴィオという存在です。メルヴィオはメルネスと違い創我の声を聞き意志を代行するのではなく、創我の意志そのものになります。つまり僕の意識は…消えてなくなるでしょう。創我の数千年の憎しみを受け止めるのですから16年しか生きていない僕の意識がなくなるのは当たり前ですね…そして話は戻りますがその創我の意思と同調して力を受け取るのが『託宣の儀式』と言います」

淡々と話す黒子だが、そんな言葉をそうなんだと聞き流せる人はいない。

だって、黒子の友人の意思が消えると聞かされて平然と出来る訳がなかった。

「何で…何でそんなにも黒子っちは冷静なんスか!黒子っちの意志が消えるなんて…そんなの俺は嫌ッス!てかそんな危険な儀式をわざわざ受けなくて良いじゃないッスか!!」

「黄瀬君、僕を心配してくれるのは嬉しいですが、儀式を受ける…これは僕のけじめでもあるんです。六年間この世界から逃げた僕の…それに今の水の民たちの心はとても不安定です。ですから絶対的な指導者が必要なんです」

「実際にアーリアが戻ってくるまで、私にはずっと儀式を受けてくれと言われてました」

黒子の言葉にシャーリィが付け足し、現在の水の民の里の現状を説明する。

その言葉を聞いてもキセキの世代のメンバーは納得していない様子だ。

そんな彼らを観て黒子は少しだけ笑みを浮かべる。

「そんな顔をしないで下さい皆さん。六年間逃げていた僕が決意出来たのは皆さんと出会い決別し、再び絆を結び治すことが出来たからこそ僕は勇気が生まれたんです。だいたいキセキの世代と言われた皆さんを倒した僕がそう簡単に創我の意志に負けるはずないでしょう!一時的には意志を奪われるかもしれませんが、僕は創我と対話して憎しみを受け止め、再び皆さんのところに戻ってきます。だから皆さんは僕を信じて待っていてください」

黒子の言葉にキセキの世代メンバーは一瞬ポカンとするが、全員苦笑する。

それは黒子の決意を受け入れたのだ。

「次は勝つからなって言っただろテツ。次にお前を負かすのは俺なんだから創我なんて訳わからない意志に負けんテツ」


青峰は拳を差し出す。

黒子もその拳に自分の拳をぶつける。

相棒だった頃からの自然な動作。

「青峰、お前にはわるいのだが、次に黒子を誠凛を倒すのは、常に人事を尽くしている秀徳高校なのだよ。だから黒子…それまで何が相手でも負けるのは許さないのだよ」

緑間なりの気持ちを黒子に伝える。

「黒子っち!俺言ったッスよね!次こそうちが勝つって…リベンジだって…だから負けたら許さないッス!黒子っちを倒すのは俺なんスから!」

黄瀬の言葉に黒子は少し涙腺が緩む。

「俺さ〜負けっぱなしって嫌なんだよね。だから黒ちんにはちゃんと勝ってくれないとこまるじゃん。まぁ黒ちんは無駄に暑苦しいから大丈夫だと思うけどね」


紫原の気持ちを黒子はまっすぐ受け止める。

身長差はかなりあるがまっすぐ紫原の目を見て。

「テツくん今度こそ絶対に情報を包み隠さずゲットするんだから…テツくんはテツくんでいてくれないと。それにテツくんにリベンジするために最近は大ちゃんも少しずつ真面目になったのに、テツくんが創我さんに負けたらまたグレちゃうし」

自分がいなくてはいけないと言ってくれる桃井。

「黒子…僕と俺に初めて敗北を与えたお前が創我などに負けるのか?僕を負かしたんだ…そんなのは許さないからな。それに俺は言ったよ次こそ勝つのは俺たちだって…だから俺たちはお前を信じてるよ。俺たちキセキの世代相手でも立ち向かってくる心の強さと諦めの悪さをね」


赤司の僕と俺の2人の気持ちを受け止めて、改めて黒子は決意した。

「僕は託宣の儀式を受けます。そして約束します。僕は負けない…必ず帰ってくると…だから待っていてください」

黒子の言葉に全員深く傾いた。

その様子を見ていた姉妹は少し羨ましかった。

見知らぬ世界で自分たちとはまた違う絆で結ばれた友情。

自分たちだけのアーリアでないことに寂しい気持ちになる。


自分たちにとっての三年間で自分たちの後ろにいたアーリアはもういない。

向こうの世界の六年間でアーリアが何を経験したのかはわからないが、強い意志を持って成長したのだ。

こんなにも沢山の人に信頼される強い人物に。

家族としては嬉しさ半分、寂しさ半分だ。

「何か…複雑だねお姉ちゃん…アーリア…弟みたいな存在だったのに、いつの間にか凄く成長してる」

「シャーリィの気持ちはわかるわ。私も複雑だもの…でも彼らとアーリアとの繋がりも強いけど私たちも負けないぐらいアーリアが大切だわ。それはセネルもワルターもそう思うんでしょうね」

ステラは弟や幼なじみを思いながら苦笑する。

ステラの言葉にシャーリィはそういえばと思い出したように呟く。

「お兄ちゃんとワルター、数日後に里に戻ってくるんだって。アーリアが戻ってきたの大陸の水の民にも風の噂で伝わったみたい」

「そう…凄く賑やかになりそうね」

2人は苦笑しながら、セネルとワルターを思い出す。

また5人で一緒にいられるなんて夢みたいな話だが、それは同時に数日後にはアーリアは託宣の儀式を受けることになる。

アーリアは今の友人達に不安を見せていないが内心は不安なはずだ。

シャーリィはアーリアの心が心配になり、しかしアーリアを信じようと決めた。

アーリアの友人のようにアーリアの強さを信じようと。

数日後、里の湖でステラやシャーリィ、それにキセキの世代や相棒たちと、ピクニックをしていたら、嵐のように騒がしい2人組が里に戻ってきたのだった。



[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!