短編小説
言葉な刃なり
注意事項。
ラタトスクの騎士でエミルとマルタに厳しめなゼロロイです。
ロイドは出ていませんが。
最初に初めて会った時は特に何も気にしてなかった。
ドア総督夫人に頼まれて助けにいっただけ。
可愛いマルタちゃんと野郎の迎え、とっとと終わらせて帰ろうと思った。
向こうはさぞかし俺を軽薄そうな男だと思ったのだろうが、これが俺の作り出した仮面だ。
そしてロイドが唯一見抜いてくれた自分の仮面。
ロイドに悪い噂があるのはもちろんゼロスも知っている。
恐らく何か事情があるのだろうが、あいつが噂になっていることを先導する訳がない。
世界再生の旅ではコレットちゃんを助ける為にテセアラにまで来て、3又までかけていたいた自分を信じているといってくれたロイド。
ずっと神子なんかに生まれなければと思って生きていた自分。
でも神子だからこそ出会えた仲間とロイド。
あの旅の時に仲間を信じきることが出来なかった自分を信じさせれるようにしてくれたロイド。
だから今度は自分がロイドを信じよう。
あの旅でロイドが自分を信じていると言ってくれたように。
だからこそゼロスは神子としての仕事をしつつロイドの情報を探していた。
そして出会ったのがガキんちょ…確かエミルだったか?
そしてロイドを大罪人呼ばわりするマルタ。
ロイドが何故、あいつらの言う宝石を集めているのかは知らないが…その目は自分がしていることは正しいことで、だから宝石を集めているロイドは盗人で大罪人。
本当に胸くそ悪い話だせ。
はぁ…と思わずため息をつく。
その態度に苛立ったのか背を向けて帰ろうとするゼロスにマルタは問いかける。
「貴方は…貴方は何でそんなにロイドのことを信じているんですか!?ロイドは私たちが集めている宝石を盗むだけじゃなく、パルマコスタやルインを襲撃してるんですよ!!」
「そうだよ!あいつは血も涙もない冷酷な奴なんだ!!」
二人の言葉に思わずカチンきたゼロスは背を向けていたが、再びエミルとマルタの前に歩いてくる。
「面白いことを言うね…おいガキんちょ…エミルだったけか?お前…ルインで街は知ってるか?」
ゼロスの問いにエミルはゼロスを睨み付けたまま答える。
「ルインはルインは僕の故郷だ!それなのにあいつは襲撃して…」
「確かに襲撃があったのは知っている。でもルインの連中は襲撃後も少なからずロイドを信じていただろ?あの街は世界再生の旅の時に一度滅びて、そして俺たちとロイドが中心に街に寄付をしたんだ。それだけじゃない…人間牧場に連れて行かれた人間をも助け出した。エミル…お前が言う血も涙もない冷酷な人間がな」
ゼロスの冷たい目線にエミルは少し後退りする。
しかし精一杯の勇気で口を開く。
「でも人は簡単に変わるものです!確かに貴方が言う過去のロイドは素晴らしい人間だったかもしれないけど今は違う!あいつは…っ!」
「今はね…でもお前はロイドのことを何処まで知っているんだ?自分の感情を相手にぶつけるだけ…それでロイドに救われた人間、ロイドが大好きな人間が傷つかないと思うのか?」
ゼロスの言葉にエミルは何も言えなくなった。
『はぁ…これだから物知らずなガキの相手は疲れる…』
今度こそ二人に背を向けようとしたが、マルタがゼロスを呼びとめ、凄い剣幕で問いかける。
「貴方は…貴方は何故そんなにもロイドを信じられるんですか!?あいつはっ!!」
「さっきの話を聞いてなかったのか?あいつは仲間だ。しかもあちこちの噂の事実もわかっていない。仲間を信じるのは当たり前…これもロイドが教えてくれたことだ」
「でも今のロイドは只の大罪人!そんなロイドを信じ続けるなんて変よ!!」
ゼロスの冷静な言葉にマルタはとうとうゼロスにとっての禁句を言ってしまった。
ロイドを信じるのは可笑しいと。
「へぇ〜そこのガキんちょもだけど君もなかなか面白いことを言うねマルタちゃん」
「何よ!別に可笑しなことは言ってないわ!!」
マルタの言葉にゼロスはニヤリと笑う。
「マルタちゃんはさ…そのガキんちょが大切な仲間か?」
「当たり前じゃない!エミルは大切な仲間よ!!」
「じゃあ、そのエミル君が何処かの街を襲撃したっていう噂が流れたら君はエミル君を疑う?それとも信じる?」
「エミルはそんなことしない!勝手なこと言わないでよ!!」
「何故しないと言い切れる。さっきそこのガキんちょ本人が言ったんだろ?人は変わるって…まぁあくまでそんな噂があった時にマルタちゃんはエミル君の無実を信じられるのかな?」
「当たり前じゃない!エミルは仲間だもん!信じるのは当たり前!!」
マルタの言葉にエミルは嬉しそうにマルタの名前を呼ぶが二人は気がついてないのだろうか?
自分が今言っている言葉は先ほどゼロスにぶつけていた言葉と真逆だということに。
もちろんその矛盾に気がついてないゼロスじゃない。
「へぇ〜マルタちゃんはエミル君を信じるんだね。あれ〜でもおかしいなぁ…マルタちゃんはさっき俺に言ったよね?何でロイドを信じるのか?って…マルタちゃんはエミル君を信じても良いけど、俺様はロイド君を信じてはいけない…これは随分な矛盾だと思うけどな」
「「…あっ…」」
二人は今さらながらその矛盾に気がつき言葉を失う。
「まぁ、あれだ。言葉は時としては凶器にもなる。この俺様が一瞬でも君たちの言葉に殺意を覚えたようにね…せいぜい気をつけるんだな…物知らずなガキんちょ共」
ゼロスはそう言って二人から離れていった。
背を向けて歩き、チラリと二人を見ると二人は意気消沈していたがゼロスの知ったことではない。
『まぁ、これからは言葉選びには気を付けることだなガキんちょ共』
そしてゼロスは今は行方不明のロイドの情報を得る為に王朝跡を出ていった。
END
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