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節分

そうだ、ここまではちょっとした前フリだ。
これさえ成功すれば、ここまでのほんのちょっとした些細で小さな小さな失敗は、関係なくなる。



「…やっぱ、帰れ。今日、お前ニヤニヤしてて、いつもより気持ち悪い。」

「ちょっ、ちょっと待って。」

閉めかけた玄関の隙間に足を挟み、必死にドアをこじ開け、体を滑り込ませる。

「犯罪だからな。」

「…さっ、さあ…、恵方巻を食べよう。」

「…食べたら、帰れよ。」

俺の熱意に感動したのか、晃は承諾してくれた。

俺はニコニコして、晃の後に付いていった。

「晃知ってるか?恵方巻ってのは、喋らず食べるんだぜ。」

「ああ。確か、今年の恵方は南南東やや右だったな。」

ん?

「…南南…??」

「お前、恵方も知らねーの?巻き寿司を恵方に向かって食べるから、恵方巻なんだろ。」

「…これ自体が、恵方巻じゃないのか…?」

「まあ、どうでもいい。さっさと食べるぞ。」

「ああ。…ああ!!そうだなっ!!」

二人で一緒にかぶりつく。


結構噛み切れないものだな。
でも、普通のでこれ程だったら、晃のは…。

「なかなかうまいじゃねーか。お前のくせに、たまにはやるな。」


えーーッッ!!
食べ終えてる…だとっ?!


「てか、お前、まだ一口も食べれてなくね??」

まさか、俺のが…。

「…んぐっ…んぐっ。」かっ…噛み切れない。

「……。」

「…んっ、うっ…。」くそっ。なんで…、なんで…。

「……。」

「…ちゅっ…んっ…。」もう…、吐きたい。

「…もしかして、誘ってんの?」

「……んがっ。」違う!!

「目、潤んでるし…。」

「…ん…うっ。」だって、だって、噛めないし。


「…なんか興奮してきた。」

そう言うと晃は俺を押し倒した。




「……んがぁーーっ。」
本気で違ぇーーーッッ!!!!
この展開は本気で違ぇーーーッッ!!!!



END



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