節分
4
そうだ、ここまではちょっとした前フリだ。
これさえ成功すれば、ここまでのほんのちょっとした些細で小さな小さな失敗は、関係なくなる。
「…やっぱ、帰れ。今日、お前ニヤニヤしてて、いつもより気持ち悪い。」
「ちょっ、ちょっと待って。」
閉めかけた玄関の隙間に足を挟み、必死にドアをこじ開け、体を滑り込ませる。
「犯罪だからな。」
「…さっ、さあ…、恵方巻を食べよう。」
「…食べたら、帰れよ。」
俺の熱意に感動したのか、晃は承諾してくれた。
俺はニコニコして、晃の後に付いていった。
「晃知ってるか?恵方巻ってのは、喋らず食べるんだぜ。」
「ああ。確か、今年の恵方は南南東やや右だったな。」
ん?
「…南南…??」
「お前、恵方も知らねーの?巻き寿司を恵方に向かって食べるから、恵方巻なんだろ。」
「…これ自体が、恵方巻じゃないのか…?」
「まあ、どうでもいい。さっさと食べるぞ。」
「ああ。…ああ!!そうだなっ!!」
二人で一緒にかぶりつく。
結構噛み切れないものだな。
でも、普通のでこれ程だったら、晃のは…。
「なかなかうまいじゃねーか。お前のくせに、たまにはやるな。」
えーーッッ!!
食べ終えてる…だとっ?!
「てか、お前、まだ一口も食べれてなくね??」
まさか、俺のが…。
「…んぐっ…んぐっ。」かっ…噛み切れない。
「……。」
「…んっ、うっ…。」くそっ。なんで…、なんで…。
「……。」
「…ちゅっ…んっ…。」もう…、吐きたい。
「…もしかして、誘ってんの?」
「……んがっ。」違う!!
「目、潤んでるし…。」
「…ん…うっ。」だって、だって、噛めないし。
「…なんか興奮してきた。」
そう言うと晃は俺を押し倒した。
「……んがぁーーっ。」
本気で違ぇーーーッッ!!!!
この展開は本気で違ぇーーーッッ!!!!
END
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