節分
1
『もしもし。今からお前ん家行ってもいいか?』
晃の家に向かいながら電話をかける。
左手に持つビニール袋の中には節分用の豆と俺特製の恵方巻。
着くまでの間に何度もそれを見てニヤニヤしている俺は、傍から見ればかなり不審だろう。
でも、後のことを思えば、笑みがこぼれるのも仕方がない。
「いらっしゃい。ん?何持ってるの?」
「今日、2月3日だろ?一緒に節分しようと思って。」
そう言って、豆と恵方巻を取り出し、見せる。
「おー。そういえば節分かぁ。あんまり祝ったことないなぁ。」
「じゃあ、俺が鬼のお面着けるから、晃は豆投げて。」
「よしっ!行くよー。鬼は外、福は内〜。」
「ははは。痛い痛い。」
「あ。ごめん!!大丈夫だった!?」
冗談で言ったのに、本気で心配して駆け寄ってくる。
「大丈夫。大丈夫。次は歳の数だけ豆を食べよう。」
「子供の時は少なくてもっとたくさん食べたかったけど、この歳になると結構多いね。」
晃は数えながら一個一個口に運んでいく。
「食べた?…じゃあ、次は 恵方巻 だ。」
「え?節分って豆まいて終わりじゃないの?」
「お前、恵方巻知らないのかよ。節分はこの恵方巻を無言でかぶりつくんだよ。」
「へぇー。さすが孝也。よく知ってるね。」
「まあな。さあ、これが晃ので、こっちが俺の。」
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