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レンズ

その声に一度はあいつを見ようとしたが、見る前にすぐ視線を戻す。

少しの間、私の返事を待っていたが、返さないことが分かったのか、また話し出す。

「…ご主人様、熱出したんッスよ。」

「え。そうなんですか?!」

「…初めてッスね。先輩と挨拶以外の言葉を交わすの。」

ぱあっと笑顔になるあいつ。

しまった。と思ったが、私のそんな意地なんかより、御主人様の方が大事だ。

「…そっそんなことより、御主人様は大丈夫なんですか?」

「熱の方は大丈夫らしいッスけど、上手くいって欲しいッスね。」

「そうですね、早く治っていただきたいですね。」

そう言うと、あいつは複雑そうな顔をする。

「…それも、そうなんッスけど。」

「ん?ああ。勉強のことですか?確かに、休んだ分を取り返せると良いんですが、あまり要領の良い方ではないので心配ですね。」

そう付け加えたが、またも私の返事が的を射ていなかったのか、迷うようなそぶりを見せた。

「いや。そうじゃなくて、……恋の方ッスよ。」

「…鯉?」

一瞬、頭の周りに鯉が泳いだ。

「恋ッスよ。ラ・ブ。」

「…どういうことですか?」

「先輩、知らないんッスか?!人を好きになるってことッスよ。」

「そんなことは知っている!!御主人様が恋をしているのか。と聞いているんです。」

一際大きなリアクションで聞き返してくるが、流石に私でも恋くらいは知っている。


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あきゅろす。
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