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お前には敵わない

「おれは何にも役とかしてないから、もう少し観てから行くよ。」

そう言って、今まで観ていなかった劇に目だけ戻す。

「分かった。じゃあ、着替えとかあるし、僕は先に行ってるよ。」

そう言って優斗が舞台の方へ向かっていく。

おれは、もう1クラスだけ観て向かった。

優斗はすでにドレスに着替えいて、みんなは忙しそうに動き回っていた。

いよいよ、おれ達番だ。と言ってもおれは出ないので舞台袖で観ていた。

頑張って練習していたこともあって、優斗のジュリエットなど、みんなとても上手かった。

でも、ロミオとジュリエットが出会う舞踏会のシーンになるとあのムカムカがまた出てきた。

このシーンではロミオがジュリエットに2度キスをする。

もちろん、本当にするわけではないが、ジュリエットの

「どうしましょう、私の唇はあなたの唇で汚れてしまいました。」

という台詞が聞こえてくる頃には舞台を観ていられなくて、気づくと舞台裏から出てきていた。


誰にも見られたくなかった、目の奥が痛くて涙が出てきそうだったから。

でも、歩くこともできなくて劇が行われている体育館の裏で一人座って頭を冷やすことにした。

でも、頭を冷やすどころか、優斗のことばかり浮かんできて、誰もいないから良いやと思って泣いてしまった。


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あきゅろす。
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