お前には敵わない
14
さっきより珍しい格好じゃないかと思っていたのに、優斗は検討はずれのことを答えた。
「大丈夫。健太の顔は見えてないから。」
「でも、さっき振り返った人と目が合ったんだけど。」
優斗は自信満々に言うが、スーツを着たサラリーマンは驚いて2度見してたし、女子高生達もキャーキャー言いながらガン見している。
「それじゃ、これで大丈夫?」
そう言って、少し下に下げられる、そのおかげでおれの顔は優斗の肩の位置くる。
おれは周りから見えない様に、肩に顔を埋めた。
しかし、お尻が下がったことで、おれの下半身が、優斗の、下半身に、当たる。
しかも、お尻を支えている優斗の手が必要以上に動いて、その度、違和感に体をよじらせた。
「大丈夫だけど、落ちそう。それに、さっきからお尻がぞわぞわする。」
「仕方ないよ。お尻支えないと落ちるんだから。」
やんわりとそのことを伝えても開き直って止めようとしない。
「でっ…でも、そんな摩る必要ないだろ。」
すると、ニヤッと笑って答える。
「健太が動くからだよ。」
「優斗が触るからだろ。」
そう言い争いをしながら、結局家に着いた。
途中からは言い争いに夢中になって、顔を埋めることさえ忘れていたから、周りの人にはバッチリ顔を見られていただろう。
物体暗示
(無生物に暗示をかけ、操ることができる)
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