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お前には敵わない
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「あ。おはよう。」

目が覚めるとすぐ近くにおれを優しく見つめる優斗の顔があった。

「おは…よう。え?」

体が宙に浮かんでいる感覚して、不可解さに体を動かす。

「今、健太ん家送ってあげてる途中。だから、じっとしてて。」

「あ。ありがとう。…でも、もう下ろしてくれて大丈夫。自分で歩くよ。」

じっとしててという言葉に一瞬体を強張らせたが、いつまでもお姫様だっこなんてしていたくない。

優斗は全く王子様というのに相応しいが、おれはどう考えてもお姫様には似つかわしくない。

周りの視線が痛かった。

「あ、そう?あっ。でも健太の靴学校に置いてきちゃった。」

全然、謝る気のない顔でごめんな。と笑う。

この笑顔に騙されちゃダメだと思いながらも、許している自分がいる。

「せめてこの格好はやめよう…。」

男同士でこんな格好。

おれがそう訴えると優斗は案外すんなり変えてくれた。

「じゃあ、僕の首に掴まって。」

言われた通りに優斗の首に手を回す。

すると、頭の後ろにあった手はおれの足の方に。

そして、その手は俺のお尻を支えた。

よく小さい子供がされている抱っこの体制になった。

確かに、お姫様というよりは子供かもしれないけど。

「あの…、なんかこっちの方が恥ずかしいんだけど…。」

それに、お姫様だっこより密着度が高い。


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