お前には敵わない
13
「あ。おはよう。」
目が覚めるとすぐ近くにおれを優しく見つめる優斗の顔があった。
「おは…よう。え?」
体が宙に浮かんでいる感覚して、不可解さに体を動かす。
「今、健太ん家送ってあげてる途中。だから、じっとしてて。」
「あ。ありがとう。…でも、もう下ろしてくれて大丈夫。自分で歩くよ。」
じっとしててという言葉に一瞬体を強張らせたが、いつまでもお姫様だっこなんてしていたくない。
優斗は全く王子様というのに相応しいが、おれはどう考えてもお姫様には似つかわしくない。
周りの視線が痛かった。
「あ、そう?あっ。でも健太の靴学校に置いてきちゃった。」
全然、謝る気のない顔でごめんな。と笑う。
この笑顔に騙されちゃダメだと思いながらも、許している自分がいる。
「せめてこの格好はやめよう…。」
男同士でこんな格好。
おれがそう訴えると優斗は案外すんなり変えてくれた。
「じゃあ、僕の首に掴まって。」
言われた通りに優斗の首に手を回す。
すると、頭の後ろにあった手はおれの足の方に。
そして、その手は俺のお尻を支えた。
よく小さい子供がされている抱っこの体制になった。
確かに、お姫様というよりは子供かもしれないけど。
「あの…、なんかこっちの方が恥ずかしいんだけど…。」
それに、お姫様だっこより密着度が高い。
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