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お前には敵わない
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「おれが好きなのは優斗だから、宮本のことも断ったから、だから、…ごめん。嫌いにならないでくれ。」

混乱して言いたいことの半分も言えない。

伝えきれない想いは涙となって溢れ出てくる。

優斗はおれの涙も受け止めてくれるから、優斗と出会って泣き虫になった気がする。

「よく出来ました。でもね、健太…。」

子供を甘やかす様な口調が少し変わり、おれは次に出てくる言葉が怖くなった。

「…っごめん。もう、おれのこと、呆れたよな。」

だから、優斗の口から言わせまいと割って入る。

「違うよ。僕はね、健太を嫌いになることなんて絶対無いんだよ。…健太が僕を嫌いになってもね。」

頭の後ろにある優斗の表情は見ることができない。

「う、うん。本当か?」

「うん。だから、泣き止んで。明日、目が腫れちゃうよ。」

そう言うと、そっと目尻に唇を寄せる。

ここが学校だということも忘れて泣いてしまった自分が急に恥ずかしくなった。

「擦っちゃダメ。ハンカチ濡らしてくるから、大人しく待っててね。」

優斗は立ち上がるとおれの頭をポンポンとして、ドアから出てった。

教室に一人残ったおれは背中のぬくもりが急に消え、それだけのことで孤独と不安を感じた。


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