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お前には敵わない

結局、優斗に話しかけることができずに放課後になってしまった。

宮本のかばんは机にかけられたまま。

あれから教室に戻ってきていない。

そんなことを思っていると、いつの間にか優斗がいなくなっていた。

おれは急いで教室を飛び出した。

すると帰る方向じゃない階段を上っている優斗がいた。

どうしようか迷ったが、今日、話しをしなきゃ。と思い、後ろをつけていってみると、どんどん校舎内を進んでいく。

あまりにも速いのでもう少しで見失うといえところで、優斗がある教室に入っていくのが見えた。

でも、電気も点いてないその教室を、そっと覗くと、優斗どころか誰も居ない。

おれはその教室に入ると辺りをキョロキョロと見回した。

「あれ。いない。」

やっぱり、違うところに入ったのかな。

「誰か探してるの?」

窓側の机で見えない下の方から声が聞こえた。

不審に思いながらそろそろと近づくと今まで背中を追ってきた相手が座ってこちらを見上げていた。

と思ったら、暖かいものに包まれ視界がぐんと揺れ、目線は机の位置まで下がる。

「…っ、優斗。」

「大丈夫だよ。こんなとこ、誰も来ないから…。それより、僕の後を付けてきたのは何故?」

おれが優斗の腕の中で縮こまっていたら、優しく頭を大きな手で撫でながら聞く。

「大丈夫。ゆっくりでいいから。」

身長は少ししか変わらないはずなのに、どうして優斗の背中はこんなにも大きいのだろう。

おれの体温も優斗の体温も上がり、同じになっていく。

「優斗にごめんって謝りたくて…。」

やっと出た様なおれの小さい声。


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あきゅろす。
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