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お前には敵わない

「あのさ。俺、宮本涼っていうんだけど…分かる?」

おれが何をする訳でもなく、ただぼーっと自分の席に座っていると、おれの前の席に座って気さくに話しかけてくれた。

健康的に焼けた小麦色の肌に人懐っこい笑顔を浮かべて。

宮本君はクラスのムードメーカー的な存在だから、急に一人でいるようになったおれを気にかけてのことだろう。

「分かるよ。同じクラスだろ?おれは中野…」

「中野健太だろ?知ってるよ。結構有名だし。
でも、俺のこと知ってたんだ。いつも佐々木としかいないから、覚えられてないかなぁと思ってた。
俺な、健太と…健太でいいよな?佐々木もそう呼んでるし。」

おれが話すと、宮本君はせきを切ったように自分でリアクションをとりながら、話し出した。

おれが、結構有名だということが少し気になったが、尋ねる前に話しはどんどん変わってしまう。

話の展開の速さに戸惑い、頷くことしかできなかった。

「で、健太とずっと話してみたいなって思ってたんだ。だから、これから、よろしくな。」

周りを気遣いながら、その行動には嫌味がなく、宮本に人気ある理由がよく分かった。

顔や運動神経だけではない。

そして、その魅力は優斗ともまた違っている。

あの人懐っこい笑顔を向けられれば、誰でも警戒心をといて宮本を好きになってしまうだろう。

「おう。よろしく。」

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