お前には敵わない
1
文化祭の後、あのキスの事がふと頭に浮かび、気づくとそのことでいっぱいになっていた。
そのせいでおれは危うく風呂で溺れそうになった。
あいつは危険だ。
そんなあいつを好きになっちゃったおれも十分危険だけど。
そんなことを考えてたら、文化祭で心身共に疲れてるはずなのに、夜寝れなくて眠りにつくのが随分遅くなってしまった。
それで起きたのは、昼。
目覚まし時計を見ると、12時30分過ぎを指している。
そして、何かの音がずっと聞こえている。
ピンポーン!ピンポーン!
家のチャイムが鳴っている。
おれは渋々体を起こすと、テキトーな服に着替えて階段を下りた。
玄関付近に行くと声まで聞こえてくる。
「こーんにーちはー。こーんにー…」
「煩い。」
おれは急に扉を開いた。
「近所迷惑だろ。」
朝から玄関で叫んでたら変な目で見られるぞ。
「大丈夫だよ。健太が階段下りてきてからだから。」
なんで分かるんだ?
昨日の今日なので、少し気まずく思いつつも、おれは優斗を部屋に通した。
「何する?」
平静を装っていつもの様に聞く。
やっぱりゲームかなぁ。
「キスでもする?」
思ってもいなかった答えにすぐに返答できなかった。
「健太からキスを求められるなんて思わなかったなぁ。」
「もっ…いつ求めたんだよ?!」
さっきのは全く考えてなかったし…。
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