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お前には敵わない

そう言うと、走って着替えに行った。

優斗が見えなくなると、ため息をつきながら顔を手で覆った。

普通に対応できていただろうか…

さっきから心臓の音が煩い。

自分の唇を恐る恐る手で触ってみて確かめる。


キスされたんだ…

優斗はどういうつもりなんだろう。

もしかしたら、望みがあるってことだろうか。

もう一度、唇に触れる。

「…どうしましょう、私の唇は…あなたの唇で汚れてしまいました…。」

おれが舞台裏から出てくる直前に聞いた優斗の台詞だ。

この台詞がキスの後すぐに言えていたら、優斗はもう一度キスしてくれただろうか。

「私の唇で?ああ、ありがたい、そんなふうに咎められるとは!では、その罪を私に戻していただきましょう。」

後ろから、急に聞こえるロミオの台詞。

聞かれた。と思ってバッと振り向くと唇に当たる柔らかい感覚。

健太の目が見開かれる。

2度目のキスそして、しばらくして唇が離れていく。

「おーい。健太どうしたんだよ。」

顔の前で手を振る優斗。

「なんで、居るんだよっ。」

「着替え終わって戻ってきたら、健太が可愛いこと言ってるから。」

自分でも顔の中心に熱が集まってくるのが分かる。

「さあ、僕も自由になったことだし、文化祭を楽しもう。」

手を掴んで引っ張られる。

そうだよな。せっかく、優斗と居られるんだ。楽しまないと。


言霊透視
(言葉の真意を見透かすことができる)


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