お前には敵わない
5
そう言うと、走って着替えに行った。
優斗が見えなくなると、ため息をつきながら顔を手で覆った。
普通に対応できていただろうか…
さっきから心臓の音が煩い。
自分の唇を恐る恐る手で触ってみて確かめる。
キスされたんだ…
優斗はどういうつもりなんだろう。
もしかしたら、望みがあるってことだろうか。
もう一度、唇に触れる。
「…どうしましょう、私の唇は…あなたの唇で汚れてしまいました…。」
おれが舞台裏から出てくる直前に聞いた優斗の台詞だ。
この台詞がキスの後すぐに言えていたら、優斗はもう一度キスしてくれただろうか。
「私の唇で?ああ、ありがたい、そんなふうに咎められるとは!では、その罪を私に戻していただきましょう。」
後ろから、急に聞こえるロミオの台詞。
聞かれた。と思ってバッと振り向くと唇に当たる柔らかい感覚。
健太の目が見開かれる。
2度目のキスそして、しばらくして唇が離れていく。
「おーい。健太どうしたんだよ。」
顔の前で手を振る優斗。
「なんで、居るんだよっ。」
「着替え終わって戻ってきたら、健太が可愛いこと言ってるから。」
自分でも顔の中心に熱が集まってくるのが分かる。
「さあ、僕も自由になったことだし、文化祭を楽しもう。」
手を掴んで引っ張られる。
そうだよな。せっかく、優斗と居られるんだ。楽しまないと。
言霊透視
(言葉の真意を見透かすことができる)
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