必然じゃなくていい 2 「っ僕の眼鏡…。」 もう一度言う。 もともと大きな声を出さないため、上擦ってしまったが、男には伝わっただろう。 「眼鏡…??」 男は足を上げると、靴の下の残骸を見た。 ああー。酷い。 「これか?? わりぃわりぃ。」 男は表面上だけすまなさそうな顔をすると、立ち去ろうとした。 「…まっ、待って。」 その男の腕を必死に掴んだ。 「僕、これがないと帰れないんだ。お願い。」 僕がいつまでも腕を掴んでいると、男が歩きだした。 「あっ。お願い。待って。」 「…だから、待ってやってるだろ。 ついて来い。」 僕は、また置いていかれると勘違いしたが、その人は待ってくれるつもりでゆっくりと歩き出しただけだったみたいだ。 「あの…。ありがと…。」 僕はその人にしつこく食い下がったことや、置いていかれると勘違いしたことが急に恥ずかしくなった。 「あ??いいよ。 それより、家どこ?? …お前、家帰れないんだろ?? その…、俺が…、眼鏡壊したせいで…。」 僕が頭に大量の?マークを浮かべているのが分かったのだろう。 家まで送ってくれると今度は本当に申し訳なさそうに説明してくれる。 実はさっきのも本当に悪いと思ってくれていたのかもしれないと思えてしまう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |