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キスじゃ死ねません(仮)

薄暗くジメッとした人気の無いこの場所こそが、1番の告白スポットと噂されている体育館裏だ。

だから、俺がこんなところに立っている理由。

それは、告白しかないわけだ。



帰りのHRが終わると、駆け出したい衝動を抑え、俺はけだるげに教室を出た。

そして、誰にも見られないように体育館裏に向かった。

俺が着いた時には、まだ、誰も来ていなかった。

その事に、ホッと胸を撫で下ろす。

そして、そこに立ち、何度も自分の言うべき言葉を繰り返し思い浮かべては、手に『人』という字を書いて飲み込んだ。


―あなたに初めて会った時から好きでした。
俺こんなだけど絶対大切にします。
付き合ってください。
友達からでもいいんです。
好きです。付き合ってください。
好きで―…


「あの。佐々木睦月さん…ですか?」

「…おわっ?!」


不意に後ろから肩を叩かれ、飛び上がるように振り返る。

そこには、無造作な黒髪、着崩れた制服、ひょろりとした長身を丸く曲げた猫背の男。

伊藤祐利が立っていた。


顔は長い前髪で隠されていてよく見えないが、透き通る程の白い肌と高い鼻はとても同じ日本人だとは思えない。

綺麗だ。美しい。とただ素直に見とれ、もう一度前髪で隠された、その顔を覗き込みたいと思った。





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あきゅろす。
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