卒業
4
「…なんだよ。照れるじゃんっ。」
子供ぽいとわかってて、勇気を振り絞って言った言葉も真剣に受け取られず、茶化されるだけ。
「もう知らね。…もう知らねー。お前なんか、東京でもアメリカでも宇宙でもどこでも行けば良いんだ。俺は、知らねー。」
望を置いて、早足で歩いていく。
「ちょっ、お前。どこ行くんだよ。」
「どこでもいいだろっ!!お前だって、俺に何も言わずに東京行くんだし。」
望に掴まれた腕を振り払い、大股でずんずん進む。
「おい。待てよ。」
もう一度、先程よりも強く掴まれ、無理矢理望の方を振り向く形になる。
俺は、必死で顔を逸らし目を閉じる。
「っお前……泣いてんのか?」
「泣いてねーよ。泣くかよ、馬鹿。」
「でも、涙が…。」
「馬鹿。馬鹿ばか、バカ。お前なんか…、だいっきらいだ。」
「ヒドいなぁ…。俺は結構好きなんだけどな。」
俺は、バッと顔を上げ望の顔をまともに見る。
「っ?!お前…っ俺の気持ちも知らないで、そんなこと言うんじゃねー。」
「じゃあ、教えてよ。尚人は、俺のことどう思ってるの?」
望は俺の目を真剣に見つめたまま言う。
俺は望の目に完全に捕らえられた。
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