Again
8
それから、もうひとつの予定であった病院に向かった。
大きな総合病院、ある部屋の前に立つとノックをしてドアを開けた。
「叔父さん。診てほしいんだけど。」
「なんだ、政明か。いつも言ってるだろ。そういうのは、ちゃんと受付をして来い、と。」
そうは言っても患者を相手にしている訳でもなく、ただ白衣を着てコーヒーを啜っている叔父。
「どうせ暇だろ?あ。でも、今日は俺じゃなくて、こいつを診てほしいんだ。なんか記憶喪失っぽくて。」
「…ほう。記憶喪失か。面白い。…ちょっとこっちに来なさい。」
『記憶喪失』という言葉に興味を引かれたのか、近くの丸椅子を自分の前に引き寄せて言った。
それから叔父はあれこれ質問したり、大きな機械を使って調べたり、血液を採ったりしていた。
「で、どうなんだ?」
「んー。脳に外傷はないみたいだから、きっと強いストレスによるものだろうな。」
叔父は脳のレントゲン写真のようなものを見ながら言った。
「いつ頃、記憶は戻るんだ?」
「それは、わからない。明日戻るかもしれないし、一生戻らないかもしれない。」
「そんな…。」
先に進まない答えに肩を落とす俺に、叔父は声をかけた。
「ちょっと…お前だけに話したいことがある。」
叔父は難しい顔をして俺だけを呼び出した。
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