Again
3
「もう、仕方ねーな。こっちにこい。」
そう手招きすると、やっと徐々に近づいてくる。
その瞳には怖いくらいに生気が無かった。
俺は、タオルを手に取ると頭からガシガシと拭いていった。
「これ、ビチョビチョだし脱ぐか?」
濡れて体に張り付いたワイシャツをつまみ、お前に聞いた。
しかし、お前は真っすぐ前を見つめたまま、問いかけには無反応だった。
もちろん、目も合わないし、どこを見ているかもわからない。
焦点が合ってるのかさえ疑問だった。
「あー。もう知らねーぞ。何も言わないお前が悪いんだからな。」
俺は言い訳するように独りつぶやき、お前のワイシャツのボタンに手をかけた。
一つ一つ外し、開いてみて、気づいた。
「…っお前…。」
続きを声にすることもできず、固まっていると、風呂場からお湯が溢れ出す音が聞こえた。
「あっ。やべーっ。」
急いで、お湯を止めに走った。
それから、もう一度玄関に戻るとお前を風呂場に押し込んだ。
俺はドアを閉めると、大きなため息をついてその場にへたりこんだ。
お前の細すぎる体には赤や青に変色した無数の痣。
赤黒くなっているものまであった。
どういう経緯でついたかはわからないにしろ、俺みたいな他人が見ても良いものでは決してなかった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!