Again
2
「……家もわからない。」
「んー。…なんだ。お前迷子か。」
どうしたら良いだろう、と頭を捻って考えていると、くしゃみが聞こえた。
「…くしゅん。」
そういえば、こいつ、薄着な上に雨に濡れていたんだ。ということを思い出した。
このままでは、本当に風邪を引いてしまう。とは言っても、家もわからないしな…。
「ああーもう、しかたねーな。お前、俺ん家来るか?」
俺は自分の頭を掻きながら、なるべく優しく尋ねた。
お前は驚いたように俺を見上げ、俺の目を見つめたまま、ためらいがちに頷いた。
それから家に着くまでの間、お前は俺の少し後ろを歩こうとして、俺はお前が濡れてしまわないように隣を歩こうとした。
二人の歩みはどんどんと遅くなり、俺は、このまま止まってしまうかと思ったよ。
それでも、どうにか立ち止まらずに俺のマンションに着くことができた。
「今、風呂沸かせてるから、体でも拭いて待ってろよ。」
俺はひとまずお前を靴のあふれる玄関に待たせ、乾いたタオルを手渡した。
風呂の温度を調節した後、玄関を覗くと、まだずぶ濡れのお前がタオルを持ったまま突っ立っていた。
足元には滴り落ちた雨水で水溜まりができていた。
「どうしたんだよ。そんなに風邪を引きたいのか?」
そう言っても、全く体を拭こうとしない。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!