Again
19
それから、数日後、家に帰ると鍵が開いたままになっていた。
俺は今までに感じたことが無いほどの焦燥感に駆られ、玄関を開け放つと急いで部屋の中へ入った。
そこには普段通りの部屋。
だけど、お前がいないその部屋は俺にとっては違和感だらけだった。
俺は呆然と立ち尽くしたまま、お前のことを考えていた。
次々と浮かび上がる疑問。
でも、最後に残ったのは恐怖だけだった。
記憶が戻ることを怖がっていたのはお前だけでは無かった。
俺もお前と同じくらい怖がっていたんだ。
熱海で言った言葉も、実際にお前がいなくなってみれば、それができるという自信がはっきりと有る訳ではなかった。
記憶を失っていた時、お前には俺だけだった。
でも、お前の記憶が戻れば、俺はたくさんいる中の一人でしかない。
そうなれば、はたして男である俺がお前にもう一度選んでもらえるだろうか。
不安が俺の中に渦巻いていた。
そうは言っても、俺はお前を探さずにいることはできなかった。
お前の体中についた痣、手首の傷。
その時もお前は暴力を振るわれているかもしれない。
俺には迷っている時間など無いように思われた。
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