Again
11
次の日はさすがに仕事があり、不安しかなかったが、まだ記憶の戻らないお前を一人置いて行くしかなかった。
「大丈夫か?火の元には気をつけろよ。それと、…無理しなくていいからな。じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。」
頷き、小さな声でぎこちなく見送るお前もとても不安そうだった。
その日は1日、お前の不安そうな顔を思い出しては家に帰りたくなった。
今までで1番長く感じた仕事を終え、やっと家に帰ると、玄関を開けた途端、焦げ臭い匂い。
その匂いに首を捻らせていると、ガシャンガシャンっと何かがなだれ落ちる音。
俺は靴を脱ぎ捨て、キッチンを覗いた。
そこには、料理なのか焦げたものを見事に頭から被ったお前が倒れていた。
俺は漫画みたいだと、心の中でこっそり笑った。
「大丈夫かっ?」
「ううん。料理は苦手みたい。」
「そっちじゃなくて、お前だ、お前。怪我は、無いか?」
「…僕は大丈夫。でも、床が…。せっかく、掃除はできたのに。」
確かに言われてみれば、キッチンから離れた場所は綺麗に片付いていた。
「ごめんなさい。もうこんな時間なのに、ご飯、できてなくて…。」
すまなさそうに床の上に正座して、小さくなっていた。
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