Again
1
いつもより暗い雨の中の帰り道。
俺は初めてお前を見た時、俺もついに見てしまった。と思い、背中に悪寒が走った。
それは、お前が、傘もささず白いワイシャツを着て、道の真ん中に立っていたから。
人間だと思えないほど、白く細い体をしていたから。
それと、なにより、お前に『生』というものを感じなかったからだ。
その時、俺は頭をフル回転させ、家への迂回路を考えていた。
でも、一瞬見えたお前の顔が、俺には泣いているように見えたんだ。
それは、本当に涙だったのか、雨粒が流れただけだったのかはわからない。
ただ、俺はお前が泣いている、と思った。
お前の涙から目が離せなくなり、本当に引き寄せられるかのように、お前に近づいていた。
そして、俺より十数センチ小さいお前に傘をさし掛けた。
近づくとよりハッキリとわかる小さく華奢な体。
「そんな格好で突っ立ってると風邪引くぞ。」
お前が初めて俺を見た。
その瞬間、俺の中から何かが沸き上がってくるのを感じた。
「何してたんだ?」
お前は少し俯くと目を左右に泳がせ、小さく呟いた。
「……わからない。」
「は?…じゃあ、もうこんな時間だし、家に帰った方がいいぞ。傘は貸してやるから。」
ほら。と傘を近くに突き出しても、全く受け取ろうとせず、俯いたまま首を振った。
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