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咲いた花を絵の具で染めてみた



 "空が綺麗だ"
 私は呟いた
 彼は私に聞いた
 "何故空は青いのか"
 私は答えた

 "誰かが絵の具(心)で染めた"のだと



 咲いた花を絵の具で染めてみた



 昔話をしよう。
 俺がまだ生まれていない、そんな昔のはなし。
 ある島にある人物の子供が生まれた。彼は確かにとんでもない人物から生まれたが、彼は他の子供とは大差ない、"ただの子供だった"。
 彼は生まれること自体、罪だった。それは何故なのだろう。とんでもない人物の血を引いていたとしても生き方によっては彼は世界に幸運をもたらしたかもしれないと言うのに。

 生まれてきたこと自体が罪であることは、幼かった彼も感づいた。それほどまでに大きな罪で、大きな壁が彼の前にあったからだ。
 彼の世界は真っ白でそして彼も真っ白だったのだ。

 たが、彼はたくさんの人に出会い、救われ、助け合い、家族となり、兄弟となり、仲間となり、彼は綺麗に色づき始めた。
 綺麗な、綺麗な色に。

 彼の色を例えるなら何色だろう。
 俺はふと、考えながら彼を見つめた。昔、誰かが言っていた言葉を思い出しながら。

「なあ、エース?」
「ん?」
 相変わらず俺たちは海上を気まぐれに進む。エースは前を見据えながら俺の言葉に耳を傾ける。
「エースにはあの空は何色に見える?」
「……は?」
 俺の言葉にエースは訝しげに返してきた。俺は笑っていやさ、と、さきほど思い出した昔話をはなす。
「母さんが言ってたんだ、空の色が青いのは誰かが絵の具で染めたからだと」
 エースは何も言わずに言葉に耳を傾ける。俺はそのまま言葉を続ける。
「幼かった俺には理解が出来なかった、でも、絵の具の意味が心だと言っていた父さんを思い出した。きっと父さんも母さんに言われたんだな」
 俺は深くは追求しなかったから、と苦笑しながら言う。つまり、と続ける。

「あの空の色は心が染めるんだ」

 自分の心が喜んでいれば青空に
 逆に自分の心が沈んでいれば曇天に
「エースには、何色に見える?」
 エースは少し考えるように空を仰ぎ、小さく笑ったあと、呟いた。
「綺麗な、あお、だな」
「そっか」

 俺は先ほどの続きを考える。エースはきっと、赤だ、と。そういえば誰かが言っていた……何故、太陽は赤いのか、と。それは、赤という色が、一番遠くまで届く色だから。
 きっとエースが赤く色づいたのは、きっと、あの空に届いてほしいからなのではないか。

 太陽はなくてはならないから
 あなたが生まれてこなかったら
 俺は色づかなかった
 俺の道は真っ暗なままだった

 だから

「エース」
「ん?」
「生まれてきてくれて」
 ――ありがとう


 心からこの言葉を貴方に贈ります




 end


あきゅろす。
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