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忘れかけてた日常へ

*パラレル?
*遅刻まがいの良い夫婦の日ネタ
*二人は夫婦

 それでも大丈夫?





 忘れかけてたのは、私の方だった

 明るい光に思わず目を開く。窓から入った日差しは朝が来たことを教えてくれた。
 だるい身体を起こせば、隣にいたはずの彼がいないことに気付き、ため息を吐いた。
 ……またか、と。
 眠たい目を擦り、寝室から出ていくとリビングの机の上にはすでに冷えた朝ごはんが置かれていた。
 書き置きはない。だが、これは私の旦那であるエースがやったことは間違いない。
 また何度目か分からないため息を吐く。
 エースは毎朝朝ごはんだけをきちんと作って出ていく。毎朝律儀に。
 私が朝ごはんを作ると言っても全く聞かない。ある日、私がエースよりも早く起き、朝ごはんを作れば眉を潜めて、自分で作るから、無理はしないで寝ていてほしいなどと言う。
 無理なんかじゃない。私はエースに朝ごはんさえも作らせてもらえない。働かせてももらえない。きっとエースにとってそれが私の幸せなんだと、思ってる。
 私はどうしてもそれが許せなかった。私だってエースのために……
 だがエースが私にこのように言う理由があるのはちゃんと分かっている。だからこそ私はエースも、そして自分自身も許せなかった。

 私の天使の実の力は消えてしまった

 その理由は私が望んだのもあるし、自然と必要がなくなってしまったためもある。
 エース救出後、戦う理由を失った、そして、命を得る代わりに身体に大きなハンデを背負った私たちは海賊を止めたのだ。
 今はひっそりと二人で暮らしている。海軍は私たちを死人として扱っているようだ。
 そのため私は天使の実を一年に一度食べなくてはいけないことを知っていながら、そして死ぬかも知れないと知っていながらペンダントを投げ捨てたのだ。

 それからというものエースは私を心配して無理をさせないようにしている。
 私が天使の実を食べてちょうど一年が経った日はそれこそ悪魔の実に溺れ、死ぬところだった。
 あの時のエースの顔は今でも忘れない。

 ――私の、せい、なのかなあ

 冷えたご飯を食べながら考える。
 もし、ペンダントを捨てていなければ……? エースは私に気遣うこともなかったのだろうか。
 結局私は天使の実の変わりに、一度死ぬことで何とかなったようだ。
 また、ミズミズの実は封印されたのだろうか。

 それからというもの体は日に日に弱っていった。理由は身体が拒否をしていると、チェインは言っていた。そして、戦いで得たハンデもその理由のひとつだと。
 エースは言った。失うのが一番怖い、と。




「起きたんだな」
「……お帰り」
 皿洗いをしているとエースの声に顔はそのまま、言葉を返す。
 一緒に住みはじめて二年。ルフィがまた現れたと新聞を賑わせていたとき、エースは飛びっきりの笑顔を見せてくれたものだ。
 私は時に思う。エースは海賊を止めない方がよかったのではないかと。
「悪い、昨日の仕事が昨日のうちに終わらなくてよ、朝のうちに……」
「……」
 私が黙って皿洗いを続ければ後ろから小さなため息が聞こえた。エースの表情なんて予想が吐く。呆れているんだ。
「……ネオ?」
 あまりにも黙りだった私を心配したのか、上着に手をかけながら声をかけてくる。
「何?」
 洗い物も終わり、コーヒーでも作ってあげようとカップを出しながら答えると、エースは眉を潜めた。
「何かあったのか?」
 心配そうに見つめてくるエースに私は冷静に物事を見始める。ああ、なんて子供。
「何も……コーヒー飲むでしょ?」
「あ、ああ、ありがと」
 注いだコーヒーを腰かけたエースの前に置く。ミルクたっぷり、砂糖は二杯のエースのコーヒー。
 無言のまま、口へと運ぶ。
「……やっぱりいいなあ」
「なにが?」
 いきなり呟いたエースに口へと運ぼうとした手を止め、エースを見つめる。すると、エースはこちらを見てふんわりとあの、優しい笑顔を向けた。
「俺さ、ネオが死にそうになった時、ああ、こいつもいつか死ぬんだってなんか妙に納得しちまって、そしたらすごく、すごく怖くなった」
 手に持ったままのコーヒーを見つめるエース。その視線はどこか遠くを見ているようで。
「だから、俺が出来ることは何でもしてやりたい、ネオに楽させてやりたい」
 微笑むエースを私はまぶしいと思った。
「すごく辛いときだってある、でも、帰ってくるとお帰りって言ってくれる。家にネオがいてくれる。それだけで俺は」
「でも、エース」
 エースの言葉を静かに、遮るように私は呟く。エースはこちらに視線をしっかりと向けてくれる。
「私だって、エースに楽させてあげたい。エースの役にね、立ちたい」
 だから、そう続ける私にエースは何も言わないで聞いてくれる。
「せめて、朝ごはんだけは私が作るから」
「でも」
「そのあと寝れるし、朝もエースと、いたい」
 ぽつりと呟けば、エースは目を見開いて、顔を耳まで真っ赤にし、照れ隠しなのか頭をかいている。
 私は続ける。

「エース、私たちの一緒にいられる時間なんて、短いんだよ。だから、私たちはその短い時間をどれだけ共有出来るかが大事なの」
「ああ」
「だから」


 お帰りだけじゃなくて、いってらっしゃいも、言わせて?


 忘れかけてたのは、俺だったようだ




 end



 11/22ネタでした
 なんかもうすみません←
 良い夫婦ってなんだろうって思って、いちゃいちゃも考えましたがこの二人のいちゃいちゃを想像してうえってなって却下←
 私的には自然に、当たり前に隣にいることが良い夫婦だと思うんです
 だから、エースみたいに無理矢理休ませることは不自然で、お帰りしかいえない状況も不自然で
 ネオのやりたいこともできないのも不自然何ですよ

 と、とりあえず……!
 この二人が幸せになると、いいな!!←



あきゅろす。
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