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心の底から


 明けましておめでとうございます。こんばんわ、ネオです。皆様いかがお過ごしですか?
 新年は良いものですね。お年玉も然り、おせち料理も然り。何より、新しい年の始まりということで我々白髭海賊団は盛り上がっております。
 もちろん親父からお年玉はもらいましたよ? ああそうそう。おせち料理何て綺麗なものはあるわけないんでした。
「おらおら、飲め飲め!」
「ネオ! 飲んでるか?!」
「飲んでるって」
 周りの煩い皆様の相手をするのはそりゃあもう一苦労ですが、楽しいことには違いない。飲んでますって言いましたがちゃんとジュースだよ? って、睨まないで! 石投げないで! 嘘です! 嘘つきました! お酒ですッ!
「ネオはあんまり酔ってねェみてぇだな」
 後ろから聞き慣れた声がし、振り返ればそこには一番隊隊長のマルコがいた。マルコも全く酔っているようには見えない。ってか、マルコが酔ってるとこ何て見たことないよ、俺。

 片手に酒の入ったグラスを持っていることから飲んでいる途中というのが分かる。そんなマルコににんまりと笑った。
「俺は母さん似何だけど、母さん、ざるどころか枠なんだよな」
「わく?」
「ああ、網にも引っ掛からないから枠」
 成る程、とマルコは頷き、ほとんど無くなったネオのグラスに近くの机から掻っ払って来たのだろう。酒瓶を注ぐ。
「そういえば、お前はエースにおめでとうって言ってやったかい?」
「はっ? え、ああ」
「なら、いい」
 そう言ってマルコはまた口に酒を注ぐ。勢いの良いこと良いこと。みるみるうちにグラスに入っていた酒は空になる。
 ネオもそれに続いた。
「あ、でもまだマルコにはおめでとう言ってねえな」
「は?」
 マルコは眉を潜める。そんなマルコに、ネオも眉を潜めた。

「だって、新年明けましておめでとうございますって言ってねえよな?」

 そんなネオの言葉にマルコは一瞬固まったかと思えば大爆笑し始めた。腹を抱えて笑うマルコにネオは慌てている。こんなにマルコが大爆笑したことはあっただろうか。
「お前なあ」
「いや、意味分からねえって」
 くくっと笑うマルコに眉を潜めるネオ。

「今日はエースの誕生日だい」
「――……え゛ッ?!」

 ネオの驚きぶりにマルコはまた大爆笑。ネオは相変わらずしまったという顔をしている。
「どうしよ、何も用意してねえ」
「なら、心の底からおめでとうって言ってやるんだな」
 マルコの言葉に、ネオは頷き、マルコが持っていた酒を奪い、人混みに消えていった。




 エースを見つけた。
 たくさんの人に囲まれていてなかなか近づけない。そう言われて聞いてみれば「エースおめでとう」何て言葉がたまに伺える。何てミスをしたんだ。なら、俺流の祝い方だ。
「エースッ!」
 俺が叫べば、エースが目を見開いてこちらへ振り向いた。人混みを避けて近付こうとする。それが分かったのか、俺の腕を引いた。まあ、案の定。
「いっでぇぇえ!」
 転けた。
「わりぃ」
「悪いって思ってねぇよな! 笑うな!」
「いや、思ってる」
「なら目を見てから言いやがれッ!」
 そんな言い合いに辺りも爆笑。まあ、掴みはOKだな。予想外だったが。
 エースを見てため息。腰に手を当て、仁王立ち。エースは何かを察したのか笑うのを止め、わりぃって一言呟いた。
 それは俺の台詞だ。
「エース」
「何だよ、改まって、気持ちわりぃ」
 全く。
 手に持っていた酒をエースに思いっきりかけてやる。辺りはまた大騒ぎ。
「ってめ」

「おめでとう」

 にっこりと、嘘のない笑顔で、心の底から君に送る。




 end






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