[携帯モード] [URL送信]
偽名と始まり


 親父の命令でデッドエンドレースに出ることになったエースとネオは皆に手を振られ、ストライカーを走らせる。
 あれだよね。無茶苦茶だよね。これでグランドポール超えた暁には死んでるよね。ぼろぼろだよね。
「エース、あのさあ」
 船で開催地に向かう海の上。単調に流れる雲を、海を眺め、ため息混じりに、だが、とても楽しそうにエースに言った。
「偽名で行かね? ついでに白髭ってのも隠して」
「はあ?」
 エースは不満そうな声で答える。ネオは身を乗りだし、そんなエースに抗議した。
「だって、せっかくだもんっ、楽しまねえと」
「それだと悪魔の実が使えねえだろ」
 ため息混じりに返したエースにネオは逆に、にやりと楽しそうに笑った。
「ばっかだなあ、悪魔の実何かつかっちまったら、相手が弱すぎてつまんねえだろ?」
「……お前な」
「グランドポール越えの時にだけ使って、後は俺が波を操って行けば良いじゃん」
 これ以上、ネオに何を言っても無駄だと判断したのだろう。エースは今までに無いくらい、大きなため息を吐いた。だが、その口元がつり上がっていたのはエースしか知らない。
「分かった」
「よっしゃ、じゃあレッツ優勝! だな」
 ガッツポーズなネオにエースはまた、小さなため息を吐いた。





 ハンナバルに着いた二人は、酒場に入り、コインを二枚バーデンのおじさんに見せた。バーデンは二人を見る。片方は黒い帽子を被り、黒いコートを身に纏っている。もう片方も黒い帽子にこちらは茶色いコートを身に纏っている。
 見比べられた後、着いてきなという言葉に、二人はバーデンの後ろに着いていく。歩いていくと、扉の奥へ導かれた。合図はこのコインをまた、門番の男に見せるということだ。
「ありがとな、おっさん」
 茶色いコートを纏ったネオが言えば、男は気を付けろよ、それだけ呟いた。
 二人で歩く道。ネオは笑う。
「俺のことはこれからリオと呼べ」
「何で」
「バレないように。エースのことはディースって呼ぶからさ」
「どっから取ったんだ……」
「ポートガス・D・エースのディーとエースのスでディース」
「……成る程」
 納得している最中、ゆらゆらと灯りが奥に見えてきた。門番なのだろう。ネオはがさがさとコインを探す。そして二枚出せば、下がり、奥へと進む。そこには、海賊らしい、まとまりのないざわざわとした光景が広がっていた。
「頑張ろうな、"ディース"」
「そうだな、"リオ"」
 死への道への最後の晩餐が始まる。







あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!