名前。
すっかり忘れてた。こっちではカタカナが主流だったよな……それに。
「……ネオリス、だ。ネオって呼んでくれ」
にっこり笑えば、エースは眉を潜めた。まるで俺の笑顔が殺人級みたいだな。おい。
エースは帽子を深く被り、表情を見せず、そうかとだけ返した。まるで俺から避けているようにも見える。
今後どうすれば良いのかまた、不安になる。エースと共に行動しない方が良いのだろうか……
思いにふけっていれば、いきなりぼっという音がし、そちらを向けば小規模な火災が起きていた。
「ちょっ、何やってんだよ!」
「……お前、もしかして」
そう言って俺の肩に触れる。そして指を立てるエース、だが、何か起こることはなかった。
何か、試しているように見えるのは気のせいか……?
「お前がやっぱり一億ベリーの賞金首か」
「?!」
いきなりの発言に驚くことしか出来ない。一億ベリーの賞金首が何だか俺にはさっぱりだからだ。
「お前、知らねえの?」
「だから、何が!」
「異例の一億ベリーの賞金首の女。名前も顔も分からない。ただ、発表されたのは特徴のみ。黒髪に紫色の瞳。天使の実を使い、能力発動時のみ瞳は金色に変化。天使の実の力は悪魔の実を無効化させる」
説明をだらだらとしたエース。その言葉に俺は息を呑むしかなかった。だって、それは明らかに俺のことだ。
顔はまだ出てないにしろ、狙われているのは間違いない。
男顔だったからまだ良かったものの、もしも本当に女な顔してたらさっきだって捕まってた。
「さっき、あいつらに火拳を喰らわせようとした。だが、できなかった。お前から離れれば火は出た、お前が、天使の実の能力者だろ?」
まずい。もしも、エースが俺を本気で捕まえようと思うなら俺は逃げられねえ。無理だ。
能力を使えば、もしくは勝てるかもしれない。だけど、エースを傷つけるために来た訳じゃないんだ。
「なら、捕まえるか? エース」
そう呟けば、エースは大きなため息を吐いた。また、帽子を深く被る。
「捕まえるっつたら戦うか?」
「……逃げる」
そう言えば、エースは大爆笑した。
俺は呆気にとられる。だって笑われるとは思わなかった。
「お前の方が分がある戦いでも戦わねえか」
まるで、俺が勝つみたいな言い方。
「何言ってるんだよ、能力封じれば勝てるって訳じゃない。俺の方が全てにおいてエースよりも下回ってる。無駄に戦いたくねえ、それに……」
俯く。そうだ。俺は何のためにここにきた。本当はスリルを味わうため。楽しむため。でも、今は。
「エースを助けるためにここに来たのに戦うわけにはいかねえだろ?」
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