[携帯モード] [URL送信]





 あたふたしている俺だが、盾にしているエースは全く気にしている様子はないようだ。前にいるから表情は伺えない。
「おい、そこのお前! そこにいる奴を俺たちに渡せ!」
「そこの奴は、一億がかかってる"女"だからな!」

 その一言に全員がざわめいた。
 何だ何だ、どこも間違ってねえだろ!

「え? こいつ、女か?」
「いや、だけど書いてあるぜ。黒髪に紫の瞳を持つ女」
「だけど、女ならもっとぼっきゅっぼん! だろ」
「こいつにはぼんがないな。きゅはあるが」

 ……命は助かりそうだけど何か酷い言われようじゃないか?
 確かに男体型ならぬ幼児体型だけど。これでも胸はあるんだ! さらししてんだ!
 とも言えるわけがなく、話に乗ってみる。
「確かに女顔と言われたことはあるが、俺は男! このぼんのなさがわからないか! そ、れ、と、も、男の裸を見たいのかな?」
「全くないです! はい!」
「なら見逃せ!」
 びしっと指を指せば、すみませんでしたー! と叫ぶ一同だったが、一人の男がいきなり叫んだ。

「こいつ、"火拳のエース"ですよ!」

 指さされたエースは別に驚く様子もない。俺は早くこいつらから逃げたくて仕方がない。
 もしもバレたら死ぬ。天使の実が目当てなら死ぬことはないだろうが……
 罪での賞金首なら死ぬ! 何もしてねえのに死ぬって俺、可哀想!

「火拳のエースだ!」
「捕まえろ!」

 銃を向けられ、俺はとっさにエースを掴み、前に差し出す形となる。エースはうおっとか間抜けな声を出し、笑いながら"火拳"とか叫んで拳を前に出した。
 炎が巻き込む……筈だった。男どもは目を瞑り、叫んだが、エースの手から火が出ることはなかった。
 全員がはてなを出す。
「ちょっ、エース、真面目に……ふおあ!」
 今度は自分が間抜けな声を出す番だった。エースがいきなり姫抱きをし、走り出したのだ。
「戦わないのか?!」
 その答えには答えず、走って逃げるエースだが、後ろから男どもが追いかけてくる様子はなかった。











「はあはあ……」
 息を整え、姫抱きをして逃がした男を見る。こんなに息が切れているのは疲れているからだけではない。

 能力が使えない――

 下ろした男を見れば不安そうにこちらを見る。もしかして、こいつが本当にあの、異例の一億ベリーの賞金首かもしれない。
「お前、そういえば名前は?」
 帽子を抑え、表情を伺われないようにしてそう、聞く。
 このことを知られたくないから。








あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!