頬にこぼれた涙は光へ落ちる。そして、消えた。
「これからあいつは他の世界へ行ってもらう」
「……」
「信じられないだろうな。異世界という世界があって、生まれた世界にはすでに決められた運命というものがある」
静かに語りだした少年は、大きな溜息を吐いた。
「こいつは生まれながら不幸を背負ってた」
「うん」
「だから、異世界に行けば運命は決められていない。あいつが決める事だ」
一息置き、葵は少年の方をむいて微笑んだ。
「じゃあ、あいつはきっと幸せを握るって信じる」
「そうしろ」
そう言って笑った葵は、また、一筋の涙をこぼした。
――葵?
呼ばれた気がした。呟かれた気がした。
シアワセになれって。
暗闇がだんだん明るくなり、周りを見わたせば白い空間に立っていた。周りには何もない。ただ、空間だけがそこにあった。
「俺、死んだ、のか」
「いや、」
後ろからのいきなりの言葉に振り返れば助けたはずの少年がそこには立っていた。まるで、この世のものとは思わせないその異端の瞳の色。
一歩、また一歩と近づいてくる少年。
身体は動かない。石のようにその場を動かない。
少年は溜息を吐くと、小さなフルーツのような身を司に手渡した。
「これは"天使の実"」
「……?」
「お前はこれから異世界、大海賊時代に突入している世界"ONE PIECE"へとんでもらう」
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