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 ――時は動き始めた。


 ストライカーは走る。エースとネオを乗せて。黒ひげの情報はつかめないままこの海を逆流する二人は、いつも通りだ。
「なあ、このあとはどこに行くんだ?」
 ぐでーっと伸びているネオはエースに聞く。その顔はそろそろ海に飽きた、そんな顔だった。そんなネオにあからさまなため息を吐き、答える。
「さあな、いつも通りだろ」
 いつも通りだろ、イコール分からない、というわけだ。

 ふと、ネオの記憶は昨日の夜に振り返る。エースの言葉を思い出したのだ。エースは言った。絶対に一人にしない、と。
 ようは、孤独にさせないって意味なんだろうけど、個人的にはかなり恥ずかしかったっていうか……正直、こちらとしては助かる。エースを死なすわけにはいかないから。
「……エースは黒ひげを殺すのが目的なんだろ?」
 ふと、そんなことを言ってみる。エースは眉を潜め、いきなりどうした、そう答えた。
「だって、なんかなあ、と思って」
 ネオはそれ以上、何も言わなかった。エースも黙っている。この沈黙があまりにも辛くて、ネオは笑った。
「気にすんなよ! 俺が関わることじゃないんだ」
 そう言って笑うが、エースは相変わらず黙っている。何かを考えているようだった。何だか不安になり、エース、と、名前を呼んでみるが、返事がない。しかとすることないだろ、と内心イラっときて今度は叫んだ。
「おいっ! 話聞いてんのか!」
「え、あ、ああ」
「じゃあ、俺が何て言っていたか復唱してみろ、さんはい」
「……」
「ほら! 聞いてねえじゃねえか!」
「いやいやいや、聞いてたとしても復唱できるか!」
 ぎゃあぎゃあいつも通り騒いでいれば、いつもの雰囲気が戻る。落ち着いたあと、エースは大きなため息を吐いて、聞いてきた。
「何個か質問いいか?」
「何だよ」
「コウって、誰だ?」
 大分前に寝言で呟いた人物。ネオは目を丸くした。そして、笑う。
「何でコウのこと知ってんだよ」
「寝言で言ってた」
 そんなエースの言葉に、あっちゃあ何て言っている。エースは眉を潜めた。ネオはまた笑った。

「コウってのは俺の兄貴のこと」
「へ?」
「本当は光(ひかり)って言うんだけど、俺たちの言葉で光をコウとも読むから。俺はコウって呼んでた」
 エースはそんなネオの言葉にふーん、と気のない返事で返した。ネオは笑っている。そして近づいた。
「で? 他に質問は?」
「いや、ない」
「何個かって言った!」
「言ったけど、もう良い!」
「何でだよ、気になるだろ!」
「気になんなくていい!」
 また、いつも通りの馬鹿騒ぎが始まる。





あきゅろす。
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